パレスチナ自治区ガザから退避した日本赤十字社の看護師川瀬佐知子さんが17日、東京都内の日本記者クラブで記者会見した。イスラエル軍が地区最大の病院に突入するなど、医療施設が攻撃対象となる現状について「国際人道法違反だ。一日も早くなくなってもらいたい」と涙ながらに語った。
 川瀬さんは7月から、ガザ北部のアルクッズ病院で看護師の教育に携わっていた。しかし、10月7日にイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まったことから病院を離れ、南部ラファへ避難した。
 避難所でけが人のケアなどに当たりながら、病院に残る現地スタッフと連絡を取り続けた。「僕らは大丈夫」「患者を置いて逃げられない」。届く声はやがて「今爆撃があった」「2日で燃料がなくなる」と切迫した内容に変わった。
 ラファでも爆撃が昼夜を問わず続き、川瀬さんは今月1日、エジプトに退避した。安堵(あんど)の気持ちも強かったが、「スタッフを置いてきてしまった」と涙があふれた。
 アルクッズ病院の患者とスタッフは14日、ガザ南部へ無事避難した。だが、イスラエル軍は15日、「地下にハマスの司令部がある」として北部のシファ病院に突入。南部でも戦闘が激化する恐れがあり、「安心できない」と顔を曇らせる。
 「命の重さは同じはずなのに世界はフェアにできていない。自分たちは無視されている」。帰国後も、男性スタッフが電話口で訴えた言葉が頭から離れない。川瀬さんは「負傷者や死者は増え続けている。傍観者であってはならない」と力を込めた。 (C)時事通信社