医学生こーたのひよっ子クリニック

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第7回 ヒーロー2万人の引退

「今年、2万人のヒーローが引退します。」

このキャッチフレーズを聞いたことがある人は多いのではないだろうか。現在、日本骨髄バンクは骨髄提供登録者(ドナー登録者)不足に警鐘を鳴らしている。

白血病などの血液疾患に対して行われる治療、それが骨髄移植だ。この治療では、ドナーの骨の内部に存在する骨髄から細胞を採取し、患者に点滴する。そして、この骨髄の細胞は、白血球の型が患者と適合したドナーの細胞でなくてはならない。適合率は兄弟姉妹の間であれば25%だが、非血縁者の場合は数百から数万分の一の確率まで低くなる。血縁者と適合しなかった場合、自力でドナーを見つけることはほぼ不可能だ。

そこでドナーを見つけるために、骨髄バンクはドナーと患者を結びつける役割を果たしている。骨髄を提供する意思のある18歳から54歳までの健康な人がドナーとして登録し、白血球の型が登録患者と合えば、骨髄移植のコーディネートがされる。ドナーが増えれば増えるほどマッチする確率は上がるので、患者の命を救うためには多くの人の骨髄ドナー登録が必要だ。

私も今年、骨髄バンクにドナー登録をした。きっかけは、名古屋で行われた骨髄バンク普及啓発イベントだ。そのイベントでは、元白血病患者が自身の経験について講演する場面があった。診断された時の不安やドナーがなかなか見つからないことへの絶望、そしてなんとかドナーが見つかった時の安堵(あんど)などを事細かに教えていただいた。「命をつないでくれてありがとうございました」という涙ながらの言葉で講演は締めくくられた。当事者の言葉にはかなりの重みがあり、私もドナーとして誰かの役に立ちたいと感じ、献血ルームでドナー登録を行った。

骨髄提供は、一定の安全性は確保されているとはいえ、ある程度のリスクを伴う。とても勇気が必要なことだ。そうやすやすとドナー登録などできないと感じるのもうなずける。しかし、その勇気で助けることのできる患者は、今とてつもなく大きな不安にかられているかもしれない、と考えると話は変わってくる。骨髄移植のドナー登録を検討し、登録が解除される55歳までヒーローになってみてはいかがだろうか。

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