免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は免疫システムを活性化させ、免疫耐性に不均衡を生じることから、腎細胞がん患者の約90%では免疫関連の有害事象(irAE)を来し、そのうち46%でグレード3以上とされている。そこで、早期にirAEの発現を予測し低グレードにとどめるためにバイオマーカーの同定が重要となるが、これまでirAEのタイプを超えた横断的バイオマーカーに関する報告はなかった。名古屋市立大学大学院臨床薬剤学の田崎慶彦氏らは、異なるICIによる治療を受けた多種のがん患者で、好酸球比率の予測因子としての有用性を後ろ向きに検討。好酸球比率3.0%以上がirAEの予測因子になりうるとCancer Med(2023年11月21日オンライン版)に発表した。
良好なOS予測因子に
対象は、2014年9月~22年8月に初めてICIを投与されたがん患者614例。レジメンは、抗PD-1抗体単独療法 (ニボルマブ240mgまたは480mgを2または4週ごとに投与)、抗PD-L1抗体単独療法(アテゾリズマブ1,200mgを3週ごと、アベルマブ10mg/kgおよびデュルバルマブ10mg/kgを2週ごとに投与)、抗CTLA-4抗体単独療法(イピリムマブ3mg/kgを3週ごとに投与)、抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体併用療法 (イピリムマブ3mg/kg+ニボルマブ80mgを3週ごと+イピリムマブ1mg/kg+ニボルマブ240mgを3週ごと、またはイピリムマブ1mg/kg+ニボルマブ360mgを6週ごとに投与)であった。
ICIと化学療法または分子標的薬の併用例、好酸球障害を有する例は除外し、死亡または追跡不能になるまで追跡した。好酸球は2コースの治療前に測定した。
614例中290例(47.2%)でirAEが発現していた。2コース治療前の好酸球比率(全て平均値)は、非irAE発現群よりirAE発現群と比べ抗PD-1抗体または抗CTLA-4抗体+抗PD-1抗体療法を受けていた患者で有意に高かった(2.5% vs. 4.3%、P<0.05)。抗PD-1抗体単独療法例および抗CTLA-4抗体+PD-1阻害薬併用療法例においてもirAE発現群で好酸球比率が有意に高かった(それぞれ2.4% vs. 4.1%、3.4% vs. 5.2%、P<0.05)。一方、抗PD-L1抗体単独療法例では有意差はないもののirAE発現群で高い傾向が見られた(2.7% vs. 4.3%、P=0.05)。
原発腫瘍別に見ると、胃がん(2.1% vs. 4.5%)、頭頸部がん(1.9% vs. 3.2%)、肺がん(2.4% vs. 4.5%)、メラノーマ(2.5% vs. 4.8%)、腎細胞がん(2.7% vs. 4.6%)、膀胱がん(3.0% vs 5.0%)の好酸球値は、非irAE発現群よりもirAE発現群で有意に高かった(全てP<0.05)。受信者動作特性(ROC)解析の結果、irAE発現を予測する好酸球の至適カットオフ値は3.0%であった(AUC=0.668、感度55%、特異度68%)。
全生存の中央値(mOS)と無増悪生存の中央値(mPFS)は、非irAE発現群よりもirAE発現群で有意に長く、好酸球3.0%以上は良好なmOSと相関していた(全てP<0.05)。また好酸球3.0%以上は、単変量および多変量cox回帰分析において良好なOS予測因子であった(単変量:ハザード比0.71、95%CI 0.56~0.90、P<0.05、多変量:同0.77、0.59~0.99、P<0.05)。
多変量解析の結果、好酸球3.0%以上がirAEの独立した危険因子であることが示された(オッズ比2.57、95%CI 1.79~3.67)。
以上の結果から、田崎氏らは「好酸球比率上昇は原発腫瘍、ICI、irAEのタイプにかかわらず、irAE発現予測の有用なバイオマーカーであることが示された」と結論。その上で「本研究は後ろ向き研究であったため、患者の選択バイアスは排除できていない。今回の知見を確認するには前向き介入試験が必要である」と付言している。
(山田充康)