政府の「全世代型社会保障構築会議」(座長・清家篤日本赤十字社社長)は5日、岸田政権が掲げる「異次元の少子化対策」の財源確保に向けた社会保障改革の工程素案を示した。ただ、目新しい方策や数値目標に乏しく、踏み込み不足の感は否めない。低迷する内閣支持率を意識し、国民の痛みにつながるような大胆な財源論を避けたい意向もあるとみられる。
 素案には、医療や介護など社会保障費の負担が現役世代に偏っている構図を是正するため、所得のある高齢者に負担を課す「応能負担」を推し進める施策が並んだ。患者の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」の見直しのほか、金融所得や資産を加味した保険料負担など、過去に政府で議論しながらしばらく手を付けていないものが大半を占める。
 一方、歳出削減効果が大きいとされる高齢者の窓口負担引き上げは現時点で明記されていない。75歳以上の後期高齢者の医療費は全体の4割近く、1人当たりの医療費は現役世代の4倍以上に達する。財務省は後期高齢者の窓口負担を現行の原則1割から2割へ引き上げるよう厚生労働省に提案してきた。
 経済界や学者の有志らでつくる「令和国民会議(令和臨調)」は先週、少子化対策の財源確保のため、社会保障費を3年後に最大年1.7兆円、10年後に同3.2兆円程度を削減できるとする提言を発表した。先送りしてきた抜本改革を今実行しなければ、全世代型社会保障の実現は「看板倒れ」に終わると警鐘を鳴らした。 (C)時事通信社