淡海医療センター(滋賀県)糖尿病宇センター糖尿病内分泌内科の柏木厚典氏らは、株式会社JMDCが提供する医療保険請求データベースJMDC Claims Databaseを用い、日本人2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の医療経済性をDPP-4阻害薬と比較する後ろ向きコホート研究を実施。その結果、DPP-4阻害薬群と比べSGLT2阻害薬群で入院および外来受診回数が少なく、総医療費および入院費が低かったとJ Diabetes Investig2023年12月19日オンライン版)に発表した。

継続処方中のHCRU、医療費を比較

 柏木氏らは、JMDC Claims Databaseから2015年1月1日~21年12月31日にSGLT2阻害薬(3万1,872例)またはDPP-4阻害薬(7万3,279例)の使用を新規に開始した18歳以上の2型糖尿病患者を抽出。継続的な処方の記録がない患者を除外し、傾向スコアマッチングにより1:1でマッチングしたSGLT2阻害薬群とDPP-4阻害薬群(各群1万7,767例)の間で継続処方期間中の医療資源の利用状況(healthcare resource utilization;HCRU)および医療費を比較した。

 HCRUの解析では、DPP-4阻害薬群と比べ、SGLT2阻害薬群で患者1人当たりの月間(per person per month;PPPM)入院回数(DPP-4阻害薬群の平均値0.0263回 vs. SGLT2阻害薬群の平均値0.0179回、最小二乗平均差-0.00846回、95%CI -0.01059~-0.00634回)、PPPM外来受診回数(同1.6215回 vs. 1.5466回、-0.07491回、-0.10256~-0.04726日)が有意に少なく、患者1人当たりの入院1回当たりの入院日数(同1.25日 vs. 0.82日、-0.426日、-0.531~-0.320日)が有意に短かった(全てP<0.0001)。

外来診療費と薬剤費は差なし

 医療費の解析では、DPP-4阻害薬群と比べSGLT2阻害薬群で、全原因による(2型糖尿病以外も含む)PPPM総医療費(DPP-4阻害薬群の平均4万8,411.0円 vs. SGLT2阻害薬群の平均4万1,948.6円、最小二乗平均差-6,462.33円、95%CI -9,323.00~-3,601.67円)、全原因によるPPPM入院費(同2万306.8円 vs. 1万3,875.7円、-6,431.07円、-9,081.64~-3,780.50円)が有意に低かった(全てP<0.0001)。全原因によるPPPM外来診療費、全原因によるPPPM薬剤費は両群で有意差がなかった。

 さらにBMIで層別化した解析の結果、肥満群(BMI 30以上)では全原因によるPPPM外来診療費および薬剤費を除く全ての評価項目が、DPP-4阻害薬群と比べてSGLT2阻害薬群で有意に低かった。一方、非肥満群(BMI 25未満)では、入院日数を除く全ての評価項目で2群間の有意差が認められなかった。

 以上の結果から、柏木氏らは「日本人2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬と比べてSGLT2阻害薬はHCRUおよび医療費が低いことが示された。特に入院がHCRUおよび医療費に大きな影響を及ぼしており、SGLT2阻害薬のような入院を回避または短縮できる治療薬が2型糖尿病の管理において経済的に有益な可能性が示唆された」と結論している。

(太田敦子)