【ソウル時事】韓国政府が医師不足への対応として、大学医学部の入学定員増加を発表したことに医師らの反発が強まっている。先週以降、研修医らが辞表を出す動きが全国で相次ぐ。医療現場の混乱は避けられず、政府は対応を迫られている。
 政府は6日、2025年度から医学部の定員を現在の全国計3058人から5058人に増やす案を発表。韓国では06年から現行の定員が維持されてきたが、首都圏集中で特に地方の医師不足が課題となってきた。
 医師らは、増員が医療の質を低下させるなどとして強く反対。メディアによると、19日にはソウルの5大病院の研修医らが辞表を提出するなど、全国で研修医らの抗議行動が続いた。手術の日程変更が余儀なくされるといった影響が出ている。
 韓悳洙首相は19日、医師らの行動は「国民の望みに反する残念な決定だ」と批判。公立病院の診療時間を延ばすなどの対応を取る考えを示した。政府は研修医らに診療継続命令を出し、警察も告発があれば捜査に乗り出す意向だ。
 世論調査機関「韓国ギャラップ」が16日に公表した調査結果によれば、定員増について「肯定的な点が多い」とする回答は76%に上る。
 ただ、韓国では文在寅前政権時代の20年にも医師増員計画が示されたが、医師らの反発で撤回した経緯がある。今回も反対行動が拡大する可能性があり、混乱はしばらく続くとみられる。 (C)時事通信社