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はしか、海外から流入
20年オリ・パラへ対策を―東京都医師会

 ◇重要なボランティア対策

 はしかの予防は、ワクチン接種が事実上唯一の対策だ。同医師会は競技会場や選手村で海外からの五輪参加者と接する機会の多くなる選手や大会関係者はもちろん、患者や発病していないもののウイルスを体内に持ち周囲に感染させる力を持つキャリアー(発病前潜伏期)に接触する可能性の高い医療や空港関係者、感染した場合に重症化しやすい小児に接する機会のある保育・教育関係者らへの接種の徹底を求めている。

海外旅行者らに応対するボランティアへの対策も必要

海外旅行者らに応対するボランティアへの対策も必要

 もう一つ大事なのが、合計10万人を超える大会ボランティアへの対策だ。選手や大会関係者にじかに接するボランティアはもちろん、街頭で観光客らへの支援に携わるボランティアでも、群衆の中で感染者に接するリスクが想定される。川上理事はボランティア申込者に対し、(1)2回以上のワクチン接種歴があることを事前に確認する(2)確認できない場合は、費用の問題はあるが、免疫力があるか抗体検査で確認した上で必要な場合はワクチン接種を受けてもらう―必要があると提言する。

 ◇難しいはしかの認定

 このように警戒に務める背景には、はしかの発病形態がある。はしかは感染後2~3週間の潜伏期間を経て38度以上の発熱が数日続き、その後口の中(口腔内)や皮膚の発疹など、典型的な症状が出てくる。その間にはしかの感染を判定する簡易な診断方法は開発されていない。

 「1990年代までにはしかの患者を診た経験のある小児科医はともかく、患者を診る可能性が高い内科や皮膚科医の中では、2000年代以降に医師になった若い世代を中心にすぐにはしかと診断できる医師は少ないのが実情だ。症状が似ているインフルエンザなどを疑っている間に隔離が遅れ、感染が拡大してしまう恐れがある」。川上医師はこう危惧する。

 このため、海外旅行からの帰国直後や訪日した外国人と接触してから1カ月以内に高熱が出た場合は、医療機関内での二次感染を防ぐため、事前にこれらの情報を医療機関側に伝えた上で受診することが望ましい。「成人でも38度以上の発熱があった場合は、まず自宅で安静にしていること。症状が治まらなければ、事前に連絡した上で医療機関を受診するようにしてほしい」と川上医師はアドバイスしている。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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