「フレイル」対策で寝たきり予防〔下〕
まずは足腰を鍛える
◇がんばったら報酬を
「生き物である以上、何かを頑張るには報酬があると効果的です」。スクワットを1週間続けたら、何か好きなものを食べる、どこか好きなところへ出かけるなど、できるだけ具体的にゴールを設定するのがコツだという。
「特に男性の場合はモノの報酬よりも、まわりから『すごいね』と言われることの方がいい。外出を嫌がった場合、『~さんが、あなたが来てくれないと寂しいって』など、必要とされていることを強調すると、心に響くようです」
足は肩幅に開いて、かかとを上げたり下ろしたり(つま先立ち)を行う
◇足踏みで体を温める
日常生活の活動に支障が出ないよう、より積極的な最低限の筋トレメニューを紹介してもらった。「体重を支える下半身の筋肉を鍛えることが大切です。足腰が弱ってくると、活動性が低くなり、フレイルにつながるので、悪循環の連鎖を食い止めることが重要です」
筋トレの前に、有酸素運動をして体を温めることから始めよう。いきなり外へ出てウオーキングするのは大変という人は、テレビを見ながらその場で足踏みをするだけでもよい。これなら雨の日も問題なくできるし、夏の暑い日にはクーラーをかけた部屋でできる。最初は7~8分程度が目安だが、体力がつくにつれ、徐々に時間を延ばしていく。
スクワットと呼ばれる動き。椅子に腰かけるような感じでひざを曲げたり伸ばしたりする
◇ふくらはぎ、太ももを鍛える
壁などに手をついた状態で、足は肩幅に開いて、かかとを上げたり下ろしたり(つま先立ち)を行う。姿勢が前かがみにならないよう、まっすぐ立つことがポイント。
ステップ台や階段などの段差を使って、足を半分宙に浮かせた状態で行うと、かかとをおろしたときの可動域が広くなるので、より効果的。20回1セットが目安。
スクワットと呼ばれる動きで、椅子に腰かけるような感じで、上半身はまっすぐ垂直に保ったまま、ひざを曲げたり伸ばしたりする。上がってくるときに反動を使わず、お尻の筋肉を意識するのがポイント。曲げたとき、ひざはつま先より前に出ない。
10回1セットで2セットが目安。
◇中高年から予防したい
両足を開いて、片足ずつ重心をかけて、内転筋と外転筋、中殿筋をストレッチ。軸になる脚をなるべく深く曲げ、体重をかけるのがコツ。左右交互に行う。
片足ずつ重心をかけて、内転筋と外転筋、中殿筋をストレッチ
10回1セット×2回が目安。
フレイルは可逆的な状態だとは言っても、重症化するほど戻りにくい。外出がおっくうになって、いったん家にこもりがちになると、再び活動性を取り戻すには、大きなエネルギーが必要になるからだ。
「やはり中高年から体を動かし、人付き合いをまめにすることが大切です。人とのつながりがあれば、外出して、誰かと一緒に食事をする機会もありますし、自然と歩く習慣が身に付きます。外出して人と会うこと自体が社会的フレイルの予防になります」
フレイルはある日突然陥るものではなく、年単位でジワジワと進んでいくもの。気が付いた時には、後戻りできなくなっている、という状況にならないよう、早めの気づきと対策を心がけたい。(医療ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2019/07/07 06:00)