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「フレイル」対策で寝たきり予防〔下〕
まずは足腰を鍛える

 加齢にともなう体重減少や筋力低下などが複合的に起こる「フレイル」は認知度が低いが、要介護の原因第3位を占めており、今後の高齢化対策のキーワードとなることが予想される。フレイルの段階で対策をとれば健康な状態に引き返すことができるとあって、老年医学の専門医たちが啓発に乗り出した。今回はどうすればフレイルを予防できるのか、具体策を紹介したい。

 フレイル対策に取り組む誠愛リハビリテーション病院(福岡市)の長尾哲彦院長は「日常生活に困らないくらいの筋力は、いくつになってもつけられる。だからフレイルは可逆的なのです。生活習慣を変えることは、とても難しいですが、最初はほんの小さなことでも、ふだんの生活の中でできることを取り入れてほしい」とアドバイスする。

まずはつかまり立ち

 ◇ただ立って座るだけでも

 フレイル予防が大切と分かっても、ふだん何もしていなかった人が筋トレを始めるのはハードルが高い。そこで、実際の症例で日常生活に取り入れられる小さな努力から紹介したい。

 長尾院長が実際に担当した80代の男性。胸腰椎の圧迫骨折をきっかけに日常生活の活動度ががたんと落ちてしまい、病院を退院したあとも、「また骨折するのではないか」と心配でじっとしている生活が続いてしまった。

 長尾院長は、家の中で無理なく始められる運動として、まず「つかまり立ち」するようアドバイスした。

 「家にいてテレビを見ていることが多く、座り始めると延々と座っているということでした。そこで、『コマーシャルになったら、テーブルなどしっかりしたものにつかまりながら立ったり座ったりを繰り返してください』と言いました。ただ立って座るだけですが、脚の筋肉を使うので、立ち座りは自立した生活を維持するための基本です」

 立ち座りがスムーズにできるようになったら、座るときにゆっくりと時間をかけて座る。すると、より多くの筋力が必要になる。次は何かにつかまったまま片足で立つなどして、少しずつステップアップしていく。

 「やってみると、月単位で明らかに改善していき、最初のうちは奥さんが手を添えて介助しながら診察室に入ってきていたのが、半年くらいすると一人でさっさと歩いて奥さんを後に残して入ってくるようになりました」

インタビューに応える長尾哲彦院長

 ◇脅しより褒める

 本人が「人の世話にならないように」と自主的に運動する場合は効果も出やすいが、なかなかやる気にならない場合、家族の協力が重要だ。

 「ただ、人間はマイナスを指摘されるのは誰でも嫌なもの。『~しないと要介護になる』と脅かす言葉は禁物です。『私が心配だから』とお願いする形や、いいところを積極的に褒める方が効果的です」

 とはいえ、長年暮らしてきた家族のことを褒めるのは気恥ずかしいという人も多いのでは?

 「その人のタイプによっても、何が効果的か違いますから一概には言えませんが、『昔、ゴルフしてたとき、なかなか決まってたよ』『いくつになっても、運動している姿はかっこいいね』とか、どんなことでも構いません。褒められて嫌な気持ちになる人はいないものです」

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