激しい痛み 家庭の医学

 経験したことのないような激しい痛みが突然に生じた場合には、その部位がどこであっても重病の可能性がありますので、すぐに医療機関で診療を受ける必要があります。
 痛みに付随して、顔いろがわるい、手足が冷たく感じられる、冷や汗が出る、吐き気がする、気が遠くなる、といった症状がある場合には、血圧が下がってショック状態にある可能性が考えられます。手当てしなければ意識を失うかもしれないので、まわりの人は吐物で窒息することのないように注意しつつ、手足が冷たく、ふるえが生じている場合には、からだ全体を毛布でくるんだり、湯たんぽなどで温めたりするとよいでしょう。痛みが生じている場所は、原因がわかるまでは、冷やしたり温めたりしないほうがよいです。
 以前からくり返して起こる発作的な痛みの場合には、主治医からの指示があれば、それに従います。もしも以前の症状と違う点があれば、そのことを主治医に話して対応を相談しましょう。

 急に生じる激しい頭痛は、くも膜下出血でみられ、意識障害にいたることもあります。激しい胸痛は、狭心症や心筋梗塞、肺梗塞、大動脈解離の可能性があります。大動脈解離の場合は、前胸部から背部、さらに腰部へと激痛が移行することがあります。
 腹痛の場合は、胆石による急性胆嚢(たんのう)炎、急性膵(すい)炎、虫垂炎、腸閉塞(イレウス)、胃・十二指腸潰瘍や消化管穿孔(せんこう)、腹部大動脈瘤の破裂、卵巣嚢腫(のうしゅ)の茎捻転(けいねんてん)や子宮外妊娠などの婦人科の病気でみられます。尿路結石の場合は、側腹部から背部痛がみられ、脚の動脈が突然つまる急性動脈血栓・塞栓症では、下肢の痛みやしびれ、冷感が生じます。

■激しい痛み
症状病名そのほかの症状など
激しい頭痛くも膜下出血意識障害、けいれん、吐き気・嘔吐、くびのうしろがかたくなる(項部硬直)
脳の病気呼吸困難、頭痛、嘔吐、意識障害
髄膜の病気
激しい胸痛狭心症15分以内の胸痛、締めつけられる感じ
心筋梗塞動悸、激しい胸痛、食欲がない、息切れ、むくみ、脈が速い、冷や汗
肺血栓塞栓症息切れ、血たん、せき・たん
大動脈解離突発する激しい背腰痛、ショック
激しい腹痛胆道の病気
膵臓の病気脂肪便、腰の痛み、下痢
急性腹膜炎発熱、吐き気・嘔吐、便秘、腹壁の緊張
急性虫垂炎右下腹部痛、押さえると痛む、吐き気・嘔吐、発熱
腸閉塞(イレウス)下腹部痛、腹がはる、便秘、吐き気・嘔吐、冷や汗
胃・十二指腸潰瘍食欲不振、上腹部痛、胸やけ、吐き気・嘔吐、吐血、黒色便(血便)
卵巣・卵管の病気
腎・尿路結石血尿


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹