治療・予防

関節症の患者に光明 
田中投手も経験「再生医療」

患者自身の血液を採血

患者自身の血液を採血

 ◇手術と非手術を結ぶ

 変形性膝関節症は、4段階で進む。第1段階ではヒアルロン酸の注射と鎮痛薬で対応する。しかし、症状が悪化し、最終段階まで進むと手術による人工関節が選択肢になる。

 山部副部長は「APSを注射することで関節の悪いバランスを改善する。現在は、手術以外の治療と手術との間に距離がある。それを結ぶのが再生医療だ」と話した。

 ただ、治療の効果は個人によって異なる。78歳の女性の症状は横ばいだったが、65歳の女性は三カ月後に治療の効果が表れた。正座や立ち上がる時、階段の上り下りなどの際の痛みを測る「炎症スケール(VAS)」で見ると、患者の平均値は改善した。ただ、山部副部長は「軟骨そのものを再生させるわけではない」と付け加えた。

 ◇メリットとデメリット

 PRP・APS治療にも、メリットとデメリットがあるという。山部副部長はメリットとして「関節の痛みが除かれることと、可動域が改善されることだ」とし、デメリットについては「変形性関節症の根本的な治療ではない。注射による一時的な痛みや腫れを伴うことがある」と話した。

 一方、ステロイドは抗炎症作用に対し即効性があり、患者によって処方が変わることはないが、アレルギー反応を完全には否定できない。初期の段階で処方されるヒアルロン酸も、患者によって対応は変わらないが、副作用の可能性もある。注射部位の痛みや腫れなどのリスクはAPSと変わらない。

再生医療に関する公開市民講座

再生医療に関する公開市民講座

◇自由診療、12万~30万円

 再生医療は新しいだけに、患者は選択するかどうか悩むことも少なくないようだ。山部副部長は公開講座で「よくある質問」という時間を設け、解説した。

 メリットとして(1)入院は必要ない(2)体への負担が少ないので、高齢者も受診が可能(3)1週間程度で効果が実感でき、日常生活でもメリットを享受できる―などを挙げた。

 その上で、治療費の点も付け加えた。「保険の適用になっておらず、自費となる。PRPは12万円、APSは30万円を目安にしてほしい」。この費用をどう考えるかは、患者次第かもしれない。全国の医療機関に普及し、治療技術が進歩するとともに保険適用を期待したい。(鈴木豊)

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