治療・予防

関節症の患者に光明 
田中投手も経験「再生医療」

 関節症に苦しむ患者数は約143万人とされる。整形外科の分野でも手術によらず、患者への負担が少ない「再生医療」が最近注目され、MLB(野球メジャーリーグ)の田中将大投手が治療を受けたことでも話題になった。神奈川県済生会横浜市東部病院で開かれた再生医療の公開講座を聴いた。

患者自身の血液を採血

 ◇二つの治療法

 整形外科の山部英行副部長が紹介した再生医療は、自らの血液を遠心分離した後の血小板を多く含む「多血小板血漿(けっしょう)(PRP)」療法とその高性能版と言える「自己タンパク質溶液(APS)」療法の二つだ。どちらも自分の体に注射する。

 「PRPは軟部組織の再生に関係する成長因子を多く含むため、靭帯(じんたい)や腱、筋肉の損傷などの治療に用いる。PRPから抗炎症性サイトカイン(特殊なタンパク質)と成長因子を高濃度で抽出したAPSは、関節の炎症治療に特化している」

 ◇スポーツ選手にも恩恵

 PRPは、有名なスポーツ選手にも恩恵を与えている。米国では、大人気のスポーツであるNFL(アメリカンフットボール)やMLB、NBA(バスケットボール)、PGA(ゴルフ)などの選手たちだ。手術と違って早期の現場復帰が可能なことと、ドーピングの対象にならないことが大きなメリットになっている。

PRPをうけたNLBの田中投手

 例えば、MLBヤンキースの田中投手が肘関節内側を断裂損傷した時に、医師たちは手術を勧めなかった。田中投手はPRP療法とリハビリによって復帰を果たした。山部副部長は「アスリートにとって負傷の急性期だけでなく、慢性期の治療にも有効だ」と指摘した。それは、アスリート以外の人にも当てはまる。

 いわゆるテニス肘(上腕骨外側)やゴルフ肘(上腕骨内側)、膝蓋(しつがい)やアキレス腱の炎症などがPRP治療の適応症だ。

 ◇患者は1000万人

 膝の「変形性膝関節症」に苦しむ高齢者は少なくない。患者は約1000万人、潜在患者は約3000万人とされる。65歳近くになった記者も最近、左の膝が痛みだした。期待される治療法がAPSで、関節内の炎症改善に特化した次世代PRPだ。

 膝の軟骨は、足の曲げ伸ばしや体重がかかった時のクッションの役割を果たしている。問題なのは、軟骨は一度擦り減ると治癒することはほぼないということだ。変形性膝関節症では軟骨合成と変形のバランスが不均衡になり、軟骨破壊を加速する。関節内炎症では、炎症性サイトカインが抗炎症性サイトカインを上回るようになる。

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