変形性膝関節症〔へんけいせいひざかんせつしょう〕 家庭の医学

[原因]
 中年以降に増加する膝関節の変性疾患で、老化現象のほかに外傷、関節炎、骨壊死(えし)に続発して起こる2次性のものなどもあります。発症に関連する因子には、年齢(40歳以上)、肥満などがあげられ、やや女性に多い疾患です。
 遺伝性に全身的な変形性関節症を発症する疾患もあります。

[症状]
 初期には膝関節の痛み、特に階段昇降時(下りが多い)や正座での痛み、長距離歩行後の痛みなどで気づきます。ほとんどの場合ではひざの内側がわるくなります。進行すると、ひざはO脚に変形し、短時間の歩行でも痛みを感じ、膝関節に関節液がたまってはれる、ひざの曲げ伸ばしの制限がみられるなどの症状が出てきて、日常生活で苦痛を感じるようになります。
 膝蓋(しつがい)大腿関節(お皿の裏側)の変形性関節症では、椅子からの立ち上がり動作や階段昇降での痛みが膝蓋骨の周囲や裏側にみられます。

[診断]
 症状、ひざのX線検査などから診断します。X線検査は立位で撮影したものが診断には有用です。しかし、ひざのX線検査の重症度と本人が感じる症状の程度とは必ずしも一致しません。また、高齢者では加齢による変化が多少はみられるのがふつうですから、重症度はX線検査の所見だけで決まるのではなく、症状を含めた全体として判断する必要があります。

[治療]
 大腿四頭筋強化訓練、足底挿板(オーダーメイドの靴の中敷き)、膝装具、ヒアルロン酸製剤の関節内注入療法、消炎鎮痛薬の外用・内服などの薬物療法、関節鏡手術や骨切り術、人工関節置換術などの手術療法があります。いっぽう、2023年6月1日から、外科的治療の対象とならない変形性膝関節症に伴う慢性疼痛(とうつう)を有する患者のうち、既存の保存療法で奏効しない患者に対して、末梢神経ラジオ波焼灼療法が新たに保険適用となりました。実施には厚生労働省が設ける基準を満たす必要があり、実施可能な施設は限られているのが現状です。専門医と相談のうえ、治療法の決定が必要です。

 これらのうち、大腿四頭筋強化訓練は治療の基本となる療法で、重症度にかかわらず必ずおこなってください。下図に示すような方法で、膝伸展位で下肢を挙上し、10秒の保持を1度に20回、1日に3度(朝、昼、夜)おこなうことが理想です。筋力の強化に伴い、歩行時、階段昇降時の安定感が実感でき、痛みの軽減が期待できます。

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