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総合大学の英知を結集
~3学部合同授業でチーム医療の基礎をつくる―帝京大学医学部~

 帝京大学は1931年、夜間制の男子商業学校・帝京商業学校としてスタートした。66年に帝京大学が設立され、現在は五つのキャンパスに人文、社会系、自然科学系の10学部11研究科を擁する総合大学となった。医学部のある板橋キャンパスには薬学部、医療技術学部の3学部7学科があり、医療系総合大学でもある。教育理念は「自分流」。川村雅文医学部長は「自分流は解釈を誤ると危険な言葉。無手勝流ではなく、世の中にとって必要と自分が思うことを自己の責任において実現に向けて努力するいう意味。常にいろいろな興味を持って挑戦していくことは、社会に出て一番必要なこと。自立と自律の精神を身に付けた医師を育てたい」と話す。

川村雅文医学部長

川村雅文医学部長

 ◇総合大学のメリットを生かした学際的研究を推進

 2012年に竣工(しゅんこう)した板橋キャンパスの大学棟本館には、深夜まで使える図書館や座席数約400席を備えたPCルームなど充実した施設がある。講義はすべて録画され、いつでも復習できる。国家試験用特別授業も視聴可能だ。

「私たちの時代よりも勉強量が膨大になっているのも事実ですが、勉強しやすい環境が整っているので、学習効率はかなり良くなっているはずです」

 21年4月には、総合大学ならではの取り組みとして全学部が参加する先端総合研究機構を創設した。研究棟の内部はオープンラボ仕様となっており、各分野の専門家の知識を集結し、文理融合型の学際的な研究に取り組む。

 「例えば、気道の空気の流れをシミュレーション解析しようとした場合、解析方法のノウハウが必要になり、医学系研究者だけでは限界があります。工学系の流体の研究と呼吸器系の知識を融合させる必要がある。各専門家が持つseeds(種)を出し合って、何かできないかを模索していく中で、新たな展開が生まれてくると思います。まだスタートして1年。動き始めたばかりですが、学生たちの関心も非常に高いです」

帝京大学板橋キャンパス

帝京大学板橋キャンパス

 ◇多様性を重視し、文系の学生にもチャンスを

 伝統的に多様性を重視してきた。年齢や性別で差別されることはなく、英語、生物、国語での受験も可能で、文系の学生にも門戸を開いている。

 「医師はさまざまな患者さんを相手にしますから、いろいろな人間がいていいと思います。一度、社会に出てから医師を目指す人もいます。多様な人がいることは学生にとって良い刺激になります」

 学生の資質として重視しているのは「目的意識をはっきり持って、好奇心が旺盛であること」だ。

「ただ病気の人を助けたいというのは、医学部を受験する動機としてはいいですが、その先が大事です。それが例えば文学でも生命科学、コンピューターでも何でもいい。自分が興味を持ったところから世界がどんどん広がっていくのだと思います」

 ◇学ぶ楽しさを刺激し、モチベーションを高める

 現在、カリキュラムの中で積極的に進めているのが研究室配属だ。2~3年次から研究室に出入りすることで勉強へのモチベーションを高めるのが狙い。当初は10~20人程度だったが、現在では半数近くの学生が参加する。

 「研究者を育てるというよりも、何とかして医学への興味をかき立てたい。国家試験は100%正解を導き出すためのものですが、まだ治療法が確立されていない病気もたくさんあって、考える余地のあることを勉強するのは面白い。早い段階から研究室に出入りして、そこで実際に行われていることを知ると、またがぜんやる気が出てきたりします。モチベーション、興味を維持していくためには非常に有効です」

医学総合図書館

医学総合図書館

 ◇チーム医療の基礎を学ぶ

 医療系総合大学のメリットを生かして毎年行っているのが3学部合同授業だ。医学部、薬学部、医療技術学部の各学生がチームとなって、一つの症例についてディスカッションを展開する。最終的には、本物の専門家チームである教員のチームがカンファレンスの模範解答を見せる。

 「学生時代からチーム医療に携わるメンバーがそろっているので、非常に良い教育効果が出ています。準備に時間がかかって大変ですが、違った職種の意見を聞くことは、学生たちの良い刺激になっています」

 医学部全体のカリキュラムの編成や学生生活全般について、学生の意見を積極的に聞いて取り入れている。

 「『研究室配属の枠をもっと増やしてほしい』『医学英語は英文読解より実践的なものを学びたい』など、言われてみれば『なるほど』と思うような建設的な意見が多いです。『6年生の自習室が欲しい』と言ってきたときは『必要ないだろう』と思ったのですが、きちんと他の私学にはあるというデータを持ってきたので作りました。学生の意見は通ることが多いです」

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