三角頭蓋を伴う発達障害の新規責任遺伝子を発見
~発達障害発症メカニズムの解明につながる新たな知見~名古屋市立大学
【用語解説】
1)新生変異:両親には存在せず患者のみで同定される変異。
2)全エクソーム解析:ゲノム上のエクソン領域(遺伝子がタンパク質の配列をコードする領域)を次世代シーケンサー(高速にDNA配列を読むことができる機械)を用いて塩基配列を決定する方法。
3)ターゲットシークエンス解析:エクソーム解析で絞り込まれた候補遺伝子の変異解析をする方法。
4)新生分断変異:コードするタンパクが途中で分断される変異で患者である子供のみにみられ両親に見られないもの。
5)三角頭蓋:頭蓋骨の骨の継ぎ目(頭蓋骨縫合線)が通常より早い段階で閉し゛てしまう頭蓋骨縫合早期癒合症の一つで、前頭縫合が癒合した疾患。
6)ヘミ接合性:男性のX染色体とY染色体の様に遺伝子が1コピーしかない状態。
7)ミスセンス変異:遺伝子がコードするタンパクにアミノ酸置換をもたらす変異。
8)ホモ接合性変異:父親、母親由来の染色体両方に同一変異を示すもの。
9)コンパウンドヘテロ接合性変異:父親、母親由来の同一遺伝子内にそれぞれ異なる変異を示すもの。
10)超音波発声試験:マウスの音声コミュニケーションは超音波でなされるので、それを録音し自閉症様・コミュニケーションの指標として解析する方法。
【図の詳細説明】
図1: a. ヘミ接合性ミスセンス変異 (p.R376C; 376番目のアミノ酸がアルギニンからシステインに置き換わっている)はPJA1タンパク質の核移行シグナル(NLS)の下流、RINGドメインの上流に位置する。 b. p.R376C変異は5家系7人で同定され、6人は軽度三角頭蓋(Tri.)をまたはてんかん(Epi.)を伴った男性患者であった変異はエクソーム解析(OKI-005, OKI-020 and SIZ 家系)とターゲットシークエンス解析(OKI-061 および NAG家系)により同定された。un:てんかんについて不明。
図2:+/Y: 野生型、KI/Y: ヘミ接合性ノックインマウス、KO/Y: ヘミ接合性ノックアウトマウス
図3: a. 発声回数、 b. 発声持続時間、c. 発声の強さ、d. 周波数変調、 e最大周波数、 f. 最小周波数 WT: 野生型、Pja1KO/Y: Pja1ヘミ接合性遺伝子喪失マウス
図4:a.けいれん発作出現までの時間、b. けいれん重症度スコア、c. 強直間代発作からの回復時間。WT: 野生型、Pja1KO/Y: Pja1ヘミ接合性遺伝子喪失マウス、no GS: 発作を生じなかったマウス
【研究助成】
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム(融合脳)「Rare variantから迫る発達障害・統合失調症の診断法・治療法の開発」の分担研究開発課題「発達障害・てんかんモデルの作成とそれらを用いた治療法の開発(分担研究者:山川和弘)」の助成などにより行われました。
【論文タイトル】
A recurrent PJA1 variant in trigonocephaly and neurodevelopmental disorders
「三角頭蓋および神経発達障害の反復性PJA1変異」
【著者】
鈴木俊光 1) 2) #, 鈴木敏史 3) 4) #, Matthieu Raveau 2) #, 三宅紀子 3) #, 須藤元輝2) #, 鶴崎美徳 3) 5), 渡邊貴樹 6), 菅谷佑樹 6), 立川哲也 2), 眞崎恵美 2), 下畑充志 2) 18), 久島周 7) 8) Branko Aleksic 7), 椎野智子 7), 豊田倫子 9), 岩山佳美 9), 中岡健太郎 10), 大守伊織 11), 佐々木文 12), 渡辺研 13) 廣瀬伸一 14), 兼子直 15) 16), 井上有史 10) 吉川武男 9), 尾崎紀夫 7) 狩野方伸 6) 下地武義 17), 松本直通 3) *, 山川和弘 1) 2) * (#co-first authors, *co-corresponding authors)
名古屋市立大学医学研究科脳神経科学研究所神経発達症遺伝学分野1, 理化学研究所脳神経科学研究センター神経遺伝研究チーム2, 横浜市立大学大学院医学研究科遺伝学3, 順天堂大学産婦人科4, 相模女子大学栄養科学部5, 東京大学大学院医学系研究科神経生理学分野6, 名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野7, 名古屋大学医学部附属病院8, 理化学研究所脳神経科学研究センター分子精神遺伝研究チーム9, 静岡てんかん・神経医療センター10, 岡山大学大学院教育学研究科特別支援教育講座11, 東京歯科大学市川総合病院臨床検査科12, 国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部骨細胞機能研究室13, 福岡大学てんかん分子病態研究所14, 弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座15, 湊病院北東北てんかんセンター16, 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター17, 日本医科大学大学院感覚情報科学分野18
1)新生変異:両親には存在せず患者のみで同定される変異。
2)全エクソーム解析:ゲノム上のエクソン領域(遺伝子がタンパク質の配列をコードする領域)を次世代シーケンサー(高速にDNA配列を読むことができる機械)を用いて塩基配列を決定する方法。
3)ターゲットシークエンス解析:エクソーム解析で絞り込まれた候補遺伝子の変異解析をする方法。
4)新生分断変異:コードするタンパクが途中で分断される変異で患者である子供のみにみられ両親に見られないもの。
5)三角頭蓋:頭蓋骨の骨の継ぎ目(頭蓋骨縫合線)が通常より早い段階で閉し゛てしまう頭蓋骨縫合早期癒合症の一つで、前頭縫合が癒合した疾患。
6)ヘミ接合性:男性のX染色体とY染色体の様に遺伝子が1コピーしかない状態。
7)ミスセンス変異:遺伝子がコードするタンパクにアミノ酸置換をもたらす変異。
8)ホモ接合性変異:父親、母親由来の染色体両方に同一変異を示すもの。
9)コンパウンドヘテロ接合性変異:父親、母親由来の同一遺伝子内にそれぞれ異なる変異を示すもの。
10)超音波発声試験:マウスの音声コミュニケーションは超音波でなされるので、それを録音し自閉症様・コミュニケーションの指標として解析する方法。
【図の詳細説明】
図1: a. ヘミ接合性ミスセンス変異 (p.R376C; 376番目のアミノ酸がアルギニンからシステインに置き換わっている)はPJA1タンパク質の核移行シグナル(NLS)の下流、RINGドメインの上流に位置する。 b. p.R376C変異は5家系7人で同定され、6人は軽度三角頭蓋(Tri.)をまたはてんかん(Epi.)を伴った男性患者であった変異はエクソーム解析(OKI-005, OKI-020 and SIZ 家系)とターゲットシークエンス解析(OKI-061 および NAG家系)により同定された。un:てんかんについて不明。
図2:+/Y: 野生型、KI/Y: ヘミ接合性ノックインマウス、KO/Y: ヘミ接合性ノックアウトマウス
図3: a. 発声回数、 b. 発声持続時間、c. 発声の強さ、d. 周波数変調、 e最大周波数、 f. 最小周波数 WT: 野生型、Pja1KO/Y: Pja1ヘミ接合性遺伝子喪失マウス
図4:a.けいれん発作出現までの時間、b. けいれん重症度スコア、c. 強直間代発作からの回復時間。WT: 野生型、Pja1KO/Y: Pja1ヘミ接合性遺伝子喪失マウス、no GS: 発作を生じなかったマウス
【研究助成】
本研究は、日本医療研究開発機構(AMED) 脳科学研究戦略推進プログラム(融合脳)「Rare variantから迫る発達障害・統合失調症の診断法・治療法の開発」の分担研究開発課題「発達障害・てんかんモデルの作成とそれらを用いた治療法の開発(分担研究者:山川和弘)」の助成などにより行われました。
【論文タイトル】
A recurrent PJA1 variant in trigonocephaly and neurodevelopmental disorders
「三角頭蓋および神経発達障害の反復性PJA1変異」
【著者】
鈴木俊光 1) 2) #, 鈴木敏史 3) 4) #, Matthieu Raveau 2) #, 三宅紀子 3) #, 須藤元輝2) #, 鶴崎美徳 3) 5), 渡邊貴樹 6), 菅谷佑樹 6), 立川哲也 2), 眞崎恵美 2), 下畑充志 2) 18), 久島周 7) 8) Branko Aleksic 7), 椎野智子 7), 豊田倫子 9), 岩山佳美 9), 中岡健太郎 10), 大守伊織 11), 佐々木文 12), 渡辺研 13) 廣瀬伸一 14), 兼子直 15) 16), 井上有史 10) 吉川武男 9), 尾崎紀夫 7) 狩野方伸 6) 下地武義 17), 松本直通 3) *, 山川和弘 1) 2) * (#co-first authors, *co-corresponding authors)
名古屋市立大学医学研究科脳神経科学研究所神経発達症遺伝学分野1, 理化学研究所脳神経科学研究センター神経遺伝研究チーム2, 横浜市立大学大学院医学研究科遺伝学3, 順天堂大学産婦人科4, 相模女子大学栄養科学部5, 東京大学大学院医学系研究科神経生理学分野6, 名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野7, 名古屋大学医学部附属病院8, 理化学研究所脳神経科学研究センター分子精神遺伝研究チーム9, 静岡てんかん・神経医療センター10, 岡山大学大学院教育学研究科特別支援教育講座11, 東京歯科大学市川総合病院臨床検査科12, 国立長寿医療研究センター運動器疾患研究部骨細胞機能研究室13, 福岡大学てんかん分子病態研究所14, 弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座15, 湊病院北東北てんかんセンター16, 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター17, 日本医科大学大学院感覚情報科学分野18
【掲載学術誌】
研究成果は、米国医学誌「Annals of Clinical and Translational Neurology(アナルス・オブ・クリニカル・アンド・トランスレーショナル・ニューロロジー)」に2020年6月掲載
【お問い合わせ先】
《研究全般に関するお問い合わせ先》
山川 和弘(やまかわ かずひろ)
名古屋市立大学大学院医学研究科・脳神経科学研究所・神経発達症遺伝学分野 教授
〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
Tel:052-851-5612
《AMEDの事業に関すること》
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1
E-mail:brain-pro@amed.go.jp
(2020/06/12 16:11)