Dr.純子のメディカルサロン

コロナ禍で差別やいじめが起きるメカニズム 仁平義明・星槎大学教授に聞く


 ◇首謀者は受けのいい子

新型コロナウイルス対策で、空席を設けてホームルームを受ける生徒ら(本文と直接関係はありません)=2020年6月撮影、東京都八王子市の都立南多摩中等教育学校【時事通信社】

新型コロナウイルス対策で、空席を設けてホームルームを受ける生徒ら(本文と直接関係はありません)=2020年6月撮影、東京都八王子市の都立南多摩中等教育学校【時事通信社】

 海原 みんな、口では「いじめはやめよう」と言いますが、実際、政府や自治体などで、いじめられている人を守る対策がなされていないように思えます。行政や学校の現場で、何か必要な具体策があれば、教えてください。

 仁平 学校でいじめが起こる仕組みは、これは子どもを対象にした海外の調査ですが、だんだんと本当の様子が分かってきました。

 まず、いじめの首謀者になる子は、漫画「ドラえもん」に出てくる粗暴なジャイアンではないということです。

 首謀者になるのは、例え小学生の高学年でも、アメとムチの両方を使い分け、同級生たちを巧妙に動かす能力の高い子どもだということでした。

 威張ったり、脅したりだけしかしない、という下手な人の操り方はしない子です。人気の点でも、学級では一番高い子です。一般に先生の受けもいい。

 いじめをする動機も、他の子に対する優越性、自分が他の子の上にいることを確認するためだという結果でした。

 いじめの首謀者の子分になる子、いじめ側に立ってはやし立て、いじめを盛り立てるような子も、同じような質の子です。

 いじめを受ける子からすると、辛いのは「いじめられること」そのものもさることながら、そんな自分に誰もが無関心ということが、一番辛い経験だったと感じているとの報告がなされています。

 無関心をなくすといっても、災害の時、そうだったように「一人にはしない」などと言葉で言われるだけでなく、具体的に行動が起こされることが、いじめられる側、被災側には支えになります。

交差点の広告スペースに掲げられた医療従事者への感謝のメッセージ。不動産会社の広告スペースだが、「自分たちにも何かできることはないか」と社員が考えたという(本文と直接関係はありません)=2020年4月撮影、横浜市

交差点の広告スペースに掲げられた医療従事者への感謝のメッセージ。不動産会社の広告スペースだが、「自分たちにも何かできることはないか」と社員が考えたという(本文と直接関係はありません)=2020年4月撮影、横浜市


 ◇いじめを止める方法

 海原 具体的な行動としては、どんなことがいいのでしょうか。

 仁平 いじめを止めるには、いろいろな方法がそれぞれ有効だとされています。

 一つには、いじめられる子が最も辛かったという「無関心」をやめて、傍観しているだけの子に対して、みんなが力を合わせて守る側に回れば、いじめは止められることを、動画やゲームを使って教えるという方法があって、効果的だとされています。

 ただ、傍観している子たちも、無関心というわけではなくて、自分が無力であることに苦しんでいるという調査もあります。

 もう一つ、提案されているのは、いじめがそもそも起こらないようにするという方法です。

 いじめの首謀者が、自分が他の子よりも力があることを示したいというのが、いじめの動機になっているというのなら、いじめ防止の運動のリーダー、例えば「いじめをなくす委員会」の委員長にして、そのことで力を発揮させるという、首謀者の方向転換策です。

 もともと能力の高い子ですから、そこでも力を示すことができて、満足感があります。実際に、それで成功している先生もいます。

 海原 それは非常にいい方法のように思えます。いじめて優越感を示すということは、自分の自己肯定感が実は本質的にないことの証明のように思えますから。

 仁平 いじめを止めるには、一つ一つの方法を考えるのもさることながら、子どもたち、教職員、親たち、関係者の全てが「できることを全てやる」「みんなが見ているぞ」「みんなが黙っていないぞ」というのが基本です。

 海原 
見て見ぬふりをしない姿勢と行動が、特に教師には必要ですね。

 仁平 いじめを経験した子の調査では、いじめを止める力になっていた一番の人は、同級生たちではなくて、やはり学校の教師たちだったという報告があります。そのことを考えると、学校でのいじめでは、教師の役割は大きいでしょうね。教師はそのことを自覚してほしいものです。




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