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コロナ禍で差別やいじめが起きるメカニズム 仁平義明・星槎大学教授に聞く


 ◇マイナス要因をぼかす文化

新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査。写真は東京都板橋区PCRセンターで行われたデモンストレーション=2020年4月28日 【時事通信社】

 海原 今、日本では、感染した人が謝るという状況です。全く気分が暗くなってしまいます。責められるのが怖くて検査を受けなかったり、調子が悪くても隠してしまったりする傾向につながるような気がします。こうした傾向を是正する対策があれば、教えてください。

 仁平 検査を受けて罹患(りかん)を明らかにする傾向が低いのは、多分、今回の新型コロナウイルスに限ったことではないかもしれません。

 乳がんや子宮頸がん検診の日本人の受診率は、米英よりも、お隣の韓国よりも、ずっと低いですね。米国では両方とも8割を超えているのに、日本のそれはせいぜい4割で、半分以下です。

 わが国の文化には、特にマイナスのことをはっきりさせるのを恐れて避ける傾向があるのかもしれません。

 いじめ首謀者や他の役割の子どもの特徴を明らかにする調査が行われているのは海外だけで、日本では行われないために、いじめ対応が「豊かな心を育てる」など、観念的になりがちなのも、そのような文化が関係している可能性もあります。

 新型コロナウイルス感染症で検査を受けなかったりして、感染を曖昧にしようとする傾向があるとすれば、こうしたマイナスのことは、できるだけ自分にも他者にも明らかにするのを恐れる文化が関係しているかもしれません。

 また、近世日本の「連帯責任文化」が残っていれば、身近な人にも影響が及ぶのを恐れて、回避する傾向に拍車が掛かるでしょう。

 文化的な背景があるとしたら、自発的な受診率を上げるには、陰性であることを明示して、接客や業務を行うというやり方だけでなく、検査を受けて陽性であったときに、その後の公的な対応が、温かい実質的なもので、他者への感染を防いだことを積極的に賞賛することが必要でしょう。

 それでも、自発的な受検には抵抗が残るかもしれませんね。

 海原 風評被害、感染者への差別やいじめの背景と、日本社会の持つ文化的背景について、明確にご指摘いただきました。

 こうした文化的な背景から起こる心理については、それに気が付かないと、是正することができません。

 きれいごとのスローガンではなく、事実を直視するために必要な調査を積み重ねることが大事なのに、そうした重要性をどれくらい政府が理解しているのか、真剣に取り組む気があるか。そのことが一番の問題だと思いました。

(文 海原純子)



 仁平 義明(にへい・よしあき)
 星槎大学大学院教育学研究科教授、白鷗大学・東北大学名誉教授。日本学術会議臨床医学委員会「出生・発達分科会」委員、同心理学・教育学委員会「行動生物学分科会」委員。カラスがクルミを自動車にひかせて中身を食べる「自動車利用行動」の世界最初の報告者。著書は「防災の心理学―ほんとうの安心とは何か」(編著、東信堂)など。


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