気になる口臭、要因さまざま =多くは対処可、病気の場合も
口腔内の手入れで一番重要なのは歯磨き。細菌を発生させ、臭いの元となる食べ物のかすを残さないよう一本一本丁寧に磨くことが大切だ。プラークは歯の表面にへばりつき、塊となっていることが多いので、歯科医院で除去してもらう。
見落としがちなのが舌苔。白色や黄色がかったコケのようなものは、細菌の塊で、歯周病菌が含まれていることもある。歯磨きをする際、舌苔をそのままの状態にしておくと、臭いの元を巻き上げ、かえって口臭がきつくなることがある。
中川歯科医師は、1日1回、朝食後にガーゼで丁寧に口腔内の隅々まで舌苔を取り、汚れを目で確認する方法を推奨する。
◇口の乾燥は大敵
口腔内に汚れがなくても、生理的な口臭が強くなることがある。咽頭など喉の空間にある常在細菌「嫌気性菌」が活発になり、アンモニアガスを作りだす。しかし新鮮な唾液が流れ続ける状態では、臭気の発生はほとんど食い止められる。唾液分泌が低下すると、ドライマウスを引き起こし、口腔内の自浄作用や免疫力が低下。口腔内常在細菌叢(そう)(口内フローラ)が安定できず、口臭が起こりやすくなる。
口臭治療専門「ほんだ歯科」院長の本田俊一歯科医師は「唾液を分泌する能力こそ、口臭を防ぐための重要なカギ。生理的口臭の仕組みを理解することで、臭いをセルフコントロールできるようになります」と話す。
◇誤った方法、逆効果
本田歯科医師によると、舌の表面は繊細な「糸状乳頭」という突起に覆われ、健全な場合は全体がピンク色。数多くの突起の隙間に唾液をため込む仕組みがあり、ドライマウスを防いでいる。
しかし口腔内が乾燥すると、糸状乳頭が長く伸び、唾液だけでなく飲食物の残りかすがたまり、口臭を発するという。
ブラシで舌苔を取ることは口臭防止に効果的だが、舌をこすり過ぎると伸びた糸状乳頭がはがれ落ち、粘膜が荒れた状態になって味覚障害を引き起こす場合がある。「特に正常な状態のときの舌磨きは逆効果」と本田医師。正しい手入れを心掛けよう。
◇ストレスで口臭も
人は精神的なストレスを受けると口を真一文字に閉じ、無意識に奥歯をかみしめ舌の動きが止まる。舌の表面と上顎(じょうがく)部の間のスペースが小さくなり、唾液が流れにくくなることで口臭が発生。臭いを不安に思う連鎖でさらに口臭が強くなる。「緊張口臭」と呼ばれる症状だが、舌の周りに隙間を作り、唾液の分泌を止めないようセルフコントロールすることで解消できる。
簡単な方法としては、「ラ」と発音する舌の位置を保ち上顎部との間に隙間を作ればよい。さらに、口を閉じた状態で「ラ、ラ、ラ、ラ」と舌先をタッピングさせ唾液の分泌を促進させる。
◇適度な水分補給を
朝起きた直後の口腔内の細菌量は非常に多い。すぐ歯磨きをし、水または砂糖・炭酸を含まないスポーツドリンクなどを300ミリリットル摂取することで唾液分泌を促進。朝食は必ず取り、虫歯や歯周病を予防するためもう一度歯を磨く。
日中も食間などの空腹時に水分を補給。1日の摂取量は1.2リットルが目安だが、腸の弱い人や下痢の症状が表れた人は減らすとよい。お茶やウーロン茶は食後の口臭を緩和する働きがあるが、飲み過ぎると唾液の分泌を抑える作用がある。またコーヒーは口腔内を酸性にし、成分も舌苔に付着しやすい。口臭の原因となるので、水分補給には適さない。
補給した水分は唾液原料になるほか、自律神経系の調整、腸管活動の活発化、水分代謝の促進、解毒などの効果があるという。
◇ガムを使った方法
ガムを球形に丸め、かまずに舌の上に置く簡単な方法もお薦めだ。ガムはかまないと脳はそれを異物として認識し、吐き出そうとするため唾液が分泌されるという。舌はガムを排除しようと活発に動く。たまった唾液を飲み込むことで、新鮮な唾液が口腔内を循環し、舌の血行も促進される。
また、ガムは食後にかむと大量の唾液が分泌され、舌表面の飲食物の付着も防げる。乾燥が起きやすい口呼吸の習慣がある人でも、無意識のうちに口呼吸の習慣がなくなるため一石二鳥だ。(ソーシャライズ社提供)
■中川洋一歯科医師の詳しいプロフィールはこちら
■本田俊一歯科医師の詳しいプロフィールはこちら
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(2017/02/16 12:24)