治療・予防

ウイルス性のいぼ―疣贅
皮膚科で適切な治療を(東京女子医科大学付属八千代医療センター皮膚科診療科長 三石剛医師)

 いぼには、加齢や紫外線が原因のものと、ウイルスが原因のものがある。ウイルス性のいぼは年齢を問わずにできる。代表的なウイルス性のいぼである疣贅(ゆうぜい)について、東京女子医科大学付属八千代医療センター(千葉県八千代市)皮膚科診療科長の三石剛医師に聞いた。

尋常性疣贅の典型例

尋常性疣贅の典型例

 ▽尋常性と扁平の2種

 疣贅は、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染が原因。HPVには220種類以上の型があり、型によって感染しやすい部位や生じるいぼの形状が異なる。HPVは子宮頸(けい)がんの原因としても知られるが、疣贅を起こすものとは型が異なり、疣贅ががん化する心配はないとされる。

 疣贅は大きく「尋常性疣贅」と「扁平(へんぺい)疣贅」に分かれる。尋常性疣贅は、手足の指、手のひら、足の裏に生じやすい。表面がざらざらし、肌色から褐色の丸みを帯びたいぼができる。顔や首、爪の周囲にできることもある。

 一方、扁平疣贅は主に顔、手の甲、膝下などにできる、褐色から茶色の平たい多角形のいぼのこと。20~40代の女性にできやすい。複数のいぼが集まって発生したり、小さな引っかき傷からHPVが侵入し、線状にできたりすることが多い。「顔の扁平疣贅はにきびと間違われやすく、美顔器などの使用でウイルス感染が広がり、顔中にいぼができてしまう例もあります。ほかにも加齢に伴う老人性いぼ、足の裏にできるうおのめやたこなど、疣贅と間違いやすい皮膚病があるので、早めに皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが大事です」と三石医師は注意を促す。

 ▽凍結療法が基本

 治療では、まず液体窒素を用いてウイルス感染細胞を壊死(えし)させる凍結療法が選択されるが、痛みを伴うのが欠点だ。顔にできやすい扁平疣贅には、色素沈着を避けるため凍結療法は軽めに行い、漢方薬のヨクイニンエキス内服を併用する。いずれも保険が適用される。一方、足の裏や難治性の爪周囲の尋常性疣贅には、凍結療法は十分な効果が得られない。「角質の厚い足裏には、保険適用外ですが、いぼを軟らかくして、剥がれやすくするサリチル酸軟こうの外用が有効です」と三石医師。

 ほかに保険適用となる治療には、局所麻酔下で電気メスを使っていぼを焼き切る電気焼灼(しょうしゃく)がある。即効的に疣贅を治癒させるが、治療の痕が残りやすいなどの短所もある。

 また、保険適用外だが、炭酸ガスレーザーによる治療や接触免疫療法も有効だ。「接触免疫療法は人工的にかぶれを起こす薬品を塗って免疫を誘導し、いぼを治療します。有効性は高いですが、かぶれをコントロールする必要があり、治療実績のある医療機関で受けるのがいいでしょう」と三石医師はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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