治療・予防

原発不明がんの治療薬
~日本で使用可能に(近畿大学医学部 谷崎潤子講師)~

 どこから転移したのか分からない転移がんを「原発不明がん」と呼ぶ。発見時には進行しているケースが半数以上で、有効な治療法がないため長期間生存できない場合が多い。

 こうした中、2021年12月末に臨床試験で有効性が確認された薬「ニボルマブ(商品名オプジーボ)」が承認された。世界に先駆けて使用可能になった治療薬について、近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市)内科学腫瘍内科部門の谷崎潤子講師に聞いた。

原発不明がんとは

原発不明がんとは

 ▽約8割が予後不良

 「転移がんは、がん細胞が最初に発生した場所(原発巣)のがん細胞と同じ性質を持つため、治療時に原発巣がどこかを明らかにする必要があります。しかしまれに、十分な検査をしても分からないことがあります」

 谷崎講師によれば、原発不明がんは、がん全体の1~5%に見られ、リンパ節や肝臓、骨などに多い。生存期間は6~12カ月で、ほぼ予後不良とされる。

 ただ、一部に予後が良好なものもある。例えば「女性で脇のリンパ節転移だけの場合など、原発不明がんの15~20%は予後が良好です。推定される原発巣に準じた治療により、原発巣が分かっている転移がんと同等の効果が期待できます」。しかし「その他の約8割の原発不明がんは『予後不良群』とされ、推奨される治療法がありませんでした」。

 ▽ニボルマブで生存期間延長

 谷崎講師ら近畿大チームは、予後不良の原発不明がん患者56人を対象に、ニボルマブの効果を調べる臨床試験(医師主導の治験)を行った。ニボルマブは、がん細胞を攻撃する免疫の力を活発化させる薬。

 2週間隔で最大2年間点滴投与したところ、約2割の患者でがんの面積が50%以上縮小した。以前に抗がん剤を使ったことがある患者では、ニボルマブ投与終了後6カ月時でがんの増悪のない人が32%、生存期間は15.9カ月と、これまでより良い成績が得られた。

 これを基に、ニボルマブは原発不明がんの治療薬としても承認された。近畿大チームは遺伝子解析装置を用いて原発巣の推定や治療薬の選定を探ってきた。「有効な治療法や検査法が出ています。患者さんには前向きに治療に取り組んでいただきたいです」と谷崎講師は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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