「医」の最前線 地域医療連携の今

チームで支える在宅医療
~命に寄り添い、最期まで~ 【第21回】訪問診療の医療連携① にのさかクリニック 二ノ坂保喜理事長

 日本の高齢者人口は増加の一途をたどり、高齢者が占める割合は2030年には人口の30%、60年には40%前後に及ぶと予測されている。住み慣れた自宅で家族と共に最期の時間を過ごしたいと希望している人は少なくないが、在宅でのみとりを行う医療機関の数は少ないのが現状だという。また、在宅における緩和ケアやホスピスなど在宅医療については誤った認識を持たれていることも少なくない。福岡市で25年以上にわたって在宅医療に取り組む「にのさかクリニック」の二ノ坂保喜理事長は「今後日本においては、在宅でのみとりを行う医療機関を増やす必要がある」と話す。

二ノ坂保喜医師

 ◇地域における在宅医療の拠点として

 福岡市の中心部から車で40分ほどの所に位置するにのさかクリニックは、地域における在宅医療の拠点として1996年に開業した。当時は現在のような在宅医療体制が整ってはおらず、介護保険も始まっていなかった。

 「在宅医療や在宅ホスピスを行っているのは当院くらいでした。病院の医師からすると、自宅で何ができるのかといった偏見がある中でのスタートでした」と二ノ坂保喜医師は話す。

  にのさかクリニックでは、がんに限らず脳卒中後の自宅療養患者や高齢者、神経難病や重度の障害があるため介護を必要とする子どもや成人など、病気や障害の種類を問わず、0歳児から100歳以上の高齢者まで、常時200人ほどの患者の在宅医療を担っている。在宅医療を行うに当たっては、医師をはじめ看護師や理学療法士、ソーシャルワーカー、管理栄養士など、さまざまな医療スタッフがチームとなり、それぞれの専門性を生かしながら患者本人や患者を取り巻く家族などを支えている。

 同クリニックで在宅医療を受ける患者の数は年間に約300人、そのうち亡くなる人の数は1年間に100人ほどだという。昨年度のみとり支援では在宅で60人、施設で24人、在宅ののち病院で死亡した人が51人だった。

 「在宅医療で自宅に帰ってきたからといって、どんな場合にも在宅で最期まで頑張らなければならないというものではありません」

 二ノ坂医師は地域の医療機関や訪問看護ステーション、介護事業所や在宅に関わる施設、またボランティアグループに至るまで、地域のさまざまな活動とのつながりを大切にしながら在宅医療体制を構築してきた。

 「いったん自宅に戻っても、手術や処置が必要になれば病院に再入院をお願いすることがあります。本人の病状や家族の負担などの問題も考えて、ホスピス(緩和ケア病棟)に入る必要があればホスピスに紹介することもあります。在宅やホスピス、緊急時の看護処置も含めて、地域の中での医療などの資源をいかに活用していくかということがとても重要だと考えています」

在宅医療に取り組む「にのさかクリニック」

 ◇在宅でみとった患者は25年間で1000人以上

 患者宅に医師が訪問して診療を行う在宅医療というと、がんの終末期をイメージする人も多いかもしれないが、在宅医療は身体機能が低下して病院に通院することができない人や寝たきりの人、回復が困難な後遺症のため継続的な医療を必要としている障害者などを対象に行われている。

 かつて、急病などに対応するため行われていた往診とは異なり、訪問診療は患者の病状などに応じて定期的に訪れ、必要な時には24時間対応で臨時の往診も行う。にのさかクリニックは24時間体制で在宅医療を提供する「在宅療養支援診療所」として登録している。

 在宅医療では基本的には医師と看護師が訪問するが、ほかにも訪問看護ステーションの協力を得て、医師の指示を受けた訪問看護師が訪れることも多い。リハビリが必要であれば理学療法士、栄養指導が必要な場合には管理栄養士が訪問し、介護保険を利用しているのであればケアマネジャーも介入する。

 また、皮膚科や泌尿器科など専門外の疾患への対応には外部の医師にお願いして訪問してもらうこともあるため、在宅医療においては地域の医療機関とのつながりを大事にしているという。

 「患者さんを中心に、さまざまな病院とのつながりを構築していくことが大切です。つまり、患者さんや家族を中心に医療スタッフが“チーム”として関わっています」

 にのさかクリニックでは開院以来、25年間にわたり在宅ホスピスとして在宅でのみとりを行っている。これまでにみとりを支援した患者の総数は1000人以上。大半はクリニックから半径5キロ以内に住む地域の住民であり、地域に根差したみとりが行われてきたと言える。

 「医療がどのように命に寄り添うのか、また地域社会にどう関わるのかというのが当院のテーマです。開院して25年間、このテーマを問い続けることで地域とのつながりが拡大していきました」(看護師・ジャーナリスト/美奈川由紀)

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