「学ぶことは生きること」
~子どもを支える院内学級(昭和大学大学院 副島賢和准教授)~
院内学級は、学校教育法に基づき、入院中の子どもの教育のために、地域の公立校の分校、分教室や特別支援学級として病院内に設置された学校、学級の通称。現在、小・中学校合わせて全国に約200施設ある。学びの場は、子どもの療養生活にどのような影響を与えるのか。昭和大学大学院保健医療学研究科(横浜市緑区)の副島賢和准教授に聞いた。
コロナ禍の院内学級
▽学びが治療へのエネルギーに
子どもが入院生活を送っていると、保護者や周囲の人は「今は学校のことを忘れて病気を治すことに専念した方がよい」と考えがちだ。「勉強に時間を割く院内学級は、病気を治すためのエネルギーをそぐもの、という認識が依然として社会にあります。しかし、子どもたちの多くは、勉強を分かるようになりたい、できるようになりたいと純粋に思っています。学びは楽しいことであり、生きるためのエネルギーにもなるので、生活の質(QOL)を向上させます」と副島准教授。
医療従事者も、学ぶ子どもたちを間近に見ることで、「院内学級が病気療養中の子どもにとって、いかに大切かを実感しています」という。
▽コロナ禍での院内学級
ただ、新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い、対面での教育が難しくなり、院内学級の役割に新たな課題が生まれている。
近年、病室内のWi―Fi(ワイファイ)導入が進み、オンライン授業が可能な施設が増えている。通っていた学校とオンラインでつながり、入院中でも教育を受ける機会が拡大されたことのメリットは大きい。
しかし新型コロナ流行以降は、「学校とオンラインでつながったものの、ベッド周りのカーテンは全て閉じられ、院内学級の教員や入院生活を共にする子ども間の関わりが持ちにくくなってしまいました。子どもたちは何気ない日常の関わりの中で、病気に対する本音や不安を漏らします。その場をどう確保するのかが、今後の課題です」という。
入院生活を送る子どもたちの不安や思いをどのようにくみ取っていくのか。心理的な負担や発達、成長を支える院内学級のあり方がコロナ後の課題となっている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/09/12 05:00)
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