医学部・学会情報

肝がん早期診断の新規⾎液バイオマーカーとして⾎清PKCδを同定
~既存マーカー陰性例でも陽性例があり肝がん早期発⾒や予後向上に期待~ 東京慈恵会医科⼤学


 ④ 今後の展開

 本研究で⾎清PKCδ 測定に⽤いたサンドイッチELISA キットは研究⽤試薬ですが、今後実臨床での測定を実現するため、診断キットの開発を⽬指しています。また、本研究グループが同定した肝がんの新規早期診断マーカーPKCδ と肝がん患者の臨床的特徴との関連性を解析することにより、⾎清PKCδ 測定が将来、肝がん抑⽌や予後向上のための早期診断のみならず、予後予測や治療反応性バイオマーカーとなる可能性を多施設共同研究で検証していきます。

論⽂
タイトル
PKCδ Is a Novel Biomarker for Hepatocellular Carcinoma
著者(注;責任者)
Tsunekazu Oikawa(注), Kohji Yamada, Akihito Tsubota, Chisato Saeki, Naoko Tago, Chika Nakagawa, Kaoru Ueda, Hiroshi Kamioka, Tomohiko Taniai, Koichiro Haruki, Masanori Nakano, Yuichi Torisu, Toru Ikegami, Kiyotsugu Yoshida, and Masayuki Saruta
URL:https://www.ghadvances.org/article/S2772-5723(22)00134-0/fulltext (外部サイトにリンクします)

 ⑤ 特記事項

 本研究は⽇本学術振興会 科学研究費補助⾦(JP18K15253、 JP18K19484、 JP20H03519、JP20K07621、JP22K08063)や、国⽴研究開発法⼈⽇本医療研究開発機構(AMED)⾰新的がん医療実⽤化研究事業「早期肝がんに対するPKCδ を⽤いた新規⾼感度診断法の開発」(研究開発代表者:⼭⽥幸司)、AMED 橋渡し研究戦略的推進プログラム慶應拠点シーズA「核移⾏タンパク質の細胞外分泌を標的とした新規診断法の開発」(研究開発代表者:⼭⽥幸司)などの⽀援を受けて⾏われたものであり、現在も橋渡し研究シーズB として、慶応拠点の⽀援を受けています。

 ⑥ ⽤語解説

 (注1) ELISA (Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay) 法
 末端に酵素 (アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼなど)を結合した抗体を⽤いて抗原抗体反応を⾏い、抗体結合量と酵素反応量との相関を⽤いて酵素反応量を指標として測定する免疫学的測定法の⼀つである。

 (注2) ROC (receiver operating characteristic) 解析
 ROC 曲線は、診断法がそのくらい有⽤なのかを解析する統計学的な⽅法。特定のcutoff 値を設定した際の感度・特異度をそれぞれ縦軸・横軸 (1-特異度) にプロットして折れ線で結んだ曲線のこと。曲線下⾯積 (AUC: area under the curve) によって定量化され、鑑別能がたかい診断法であればAUC の値は1 に近づく。

 (注3) BCLC (Barcelona Clinic Liver Cancer) 病期分類
 がんの進⾏の程度は病期 (ステージ) で分類され、病期と肝予備能に応じて治療法が決定される。肝がんの病期分類で国際的に影響⼒の強いバルセロナ臨床肝がん病期分類のステージ 0 は超早期 (very early stage) に相当し、A, B, C と移⾏するに伴い進⾏がんとなる。

(了)

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