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時代の変化に対応できる歯科医に
~シミュレーション教育で臨床の力を育む―朝日大学歯学部~

朝日大学1号館

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 ◇むし歯に苦しむ子どもたちを救いたい

 田村歯学部長は、朝日大学の前身である岐阜歯科大学の第1期生。愛媛県の過疎地で地域医療に携わる開業医の家に生まれた。

 「友人に歯科医の子どもがいて、その家に出入りしているうちに『こんな仕事もあるんだ』『やったら面白いんじゃないかな』と思ったのが出発点です」

 当時は歯科医師の数が大幅に不足していて、歯科診療所は患者であふれていた。

 「子どもの口の中はむし歯だらけ。20本の歯が全部むし歯という子がざらにいて、それは悲惨な状態でした。それが『小児歯科を専門に』と思ったきっかけでした」

 歯並びやかみ合わせの悪さからくる顎(がく)関節症が注目され始めた頃、たまたま参加した東京の講演会で、アムステルダム大学顎機能障害科のTore Hansson教授に出会い、連絡を取り合ううちに1年間留学することになる。帰国後は小児の顎関節症の第一人者として活躍。学校歯科検診に顎関節のチェックが導入されるきっかけもつくった。

 乳児の哺乳・そしゃく機能の研究では、哺乳瓶メーカーと共同で乳児の吸う力、かむ力が強くなる乳首の開発も行い、2015年にグッドデザイン賞を受賞した。

 数々の功績を残してきた中で、やはり最も印象に残っているのは臨床医として40年以上関わった患者のことだという。

 「生まれつき歯が生えてこない先天性疾患の患者さんで、成長に合わせて入れ歯を作ってきました。数年に一度、一緒に食事をするのですが、私の作った入れ歯で焼き肉を食べる姿を見たときは『歯医者冥利(みょうり)に尽きる』『歯医者になってよかった』と思いました」

 ◇変わりゆく社会に対応できる歯科医師に

 これから歯科医師を目指す学生に期待することは、「時代によって変わっていく社会的なニーズに対応できるフレキシブルな考え方を持つこと」と田村歯学部長は話す。

 高齢化が進めば口腔機能の低下が問題になり、そのための対策が必要になる。また、歯科治療の技術も急速に進歩しており、新しい技術に対応していく柔軟性が必要だ。

 「歯科医院で行う歯のかたどりも、歯の表面を光でなぞるとコンピューターが3次元で歯の形を再現し、最適な詰め物をその場で作れる時代です。まず基本的な歯科医療をしっかり身に付けた上で、これから出てくるであろう新しい技術も学び、新たな問題に対応できる歯科医を目指してほしいと思います」と期待する。(ジャーナリスト/中山あゆみ)

田村康夫(たむら・やすお) 1977年岐阜歯科大学(現朝日大学歯学部)卒、84年歯学博士、88年アムステルダム大学歯学部顎機能障害科客員研究員、98年朝日大学教授(小児歯科学)、2007年歯学部長(~13年)、13年図書館長、15年副学長、20年歯学部長・副学長兼任(現在に至る)

玉置幸道(たまき・ゆきみち) 1983年昭和大学歯学部卒、87年歯学博士、昭和大学助手(歯科理工学)、90~91年米シカゴのノースウェスタン大学生体材料学客員教授、92年昭和大学講師、96年昭和大学助教授、2013年朝日大学教授(歯科理工学)、16年より教務部長(現在に至る)

【朝日大学歯学部 沿革】
1971年 岐阜歯科大学開設
1971年 岐阜歯科大学付属病院開設
1973年 岐阜歯科大学付属歯科衛生士学校を開設
     岐阜市内にある村上外科病院が本学に寄付され、本学付属村上記念病院となる
1977年 岐阜歯科大学大学院歯学研究科開設(歯学専攻、博士課程)
1984年 付属村上記念病院の新築移転
2012年 村上記念病院西館増築・総合健診センターを移転
2018年 朝日大学歯学部付属病院の名称を朝日大学医科歯科医療センターに、朝日大学歯学部付属病院PDI岐阜歯科診療所の名称を朝日大学PDI岐阜歯科診療所に、朝日大学歯学部付属村上記念病院を朝日大学病院に、それぞれ名称を改める
2021年 創立50周年を迎える


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