歯学部トップインタビュー

道内最大規模の医療系総合大学
~データに基づいた説得力ある指導を―北海道医療大学歯学部~

 北海道医療大学は1974年に学校法人東日本学園によって設立され、最初に薬学部が開設、78年に歯学部が増設された。2024年に開学50周年を迎える。保健・医療・福祉に関連する6学部9学科(薬学部、歯学部、看護福祉学部、心理科学部、リハビリテーション科学部、医療技術学部)および歯学部附属歯科衛生士専門学校を擁する私立大学であり、道内最大規模の医療系総合大学でもある。札幌からJR学園都市線で約42分、大学の名称そのままの北海道医療大学駅に直結し、アクセスも良い。建学の理念は知育、徳育、体育の三位一体による医療人としての全人格の完成。古市保志歯学部長は「知識や技能はもちろん倫理観を持たないと医療は成り立ちません。医療人として長年にわたって活躍するには体力も必要。その基盤を6年間でつくってほしい」と話す。

古市歯学部長

古市歯学部長

 ◇多職種連携医療が日常的に学べるキャンパス

 北海道医療大学の最大の特徴は、医療系総合大学として将来的な多職種連携医療に役立つ環境で学べる点だ。当別キャンパスと札幌あいの里キャンパスに6学部1専門学校、約3500人の学生がおり、学部の垣根を越えた学生同士の交流が盛んに行われている。

 「入学直後から、1人の患者を題材にして他学部の学生とグループディスカッションを行います。発展形として、高学年になると道内の地方の介護福祉施設などに出掛けて行き、そこでも各学部の学生および教員がそれぞれの立場から入居者の医療や介護についてディスカッションに参加するなど、実際の医療現場で役立つ教育を心掛けています」

 ◇国内だけでなく、海外からも学生が入学

 全国各地から学生が集まる。2食付き7万円以下の委託寮が当別駅の近くにあり、人気だ。数年前からは加速する日本の少子化を見据えて、台湾や韓国からも学生を積極的に受け入れており、1学年に10~15人ほどが在籍する。

 「外国で歯科医学を学ぼうという学生ですから、歯科医師になりたいという明確な意思を持っていて、学年でトップクラスになる優秀な学生も多いです」

 多くの歯学部に共通する悩みが、親から言われるままに、本当に歯科医師になりたいという意思を持たないまま入学してしまう学生が少なからずいることだ。モチベーションの高い海外からの学生が、他の学生にも良い刺激になっている。

 「10年くらい前までは、歯学部に入れば、ほとんどの学生が歯科医師になることができましたが、今は違います。国家試験が非常に難しくなって合格者数が限られているので競争が激化しています。よほど歯科医師になりたいという目的がしっかりしていないと、国家試験に合格するのは難しくなっています」

北海道医療大学当別キャンパスにある歯学部

北海道医療大学当別キャンパスにある歯学部

 ◇留年率も含めたデータを包み隠さずオープンに

 歯学部では、歯科医師国家試験の合格率をはじめ、各学年ごとの経年的な留年者数の推移まで、数字をすべてホームページ上で公開している。

 「総合大学なので、全学で開示しています。他の学部は国家試験の合格率も90%以上のところが多いのですが、本歯学部は昨年まで5年間80%台と比較的高い合格率が続いていたものの、今年は70%台。事実ですから隠すことはしません。昨年度の留年率は35%でしたが、今年度は25%に改善しました。入学しても、必ず卒業して国家試験に合格できるわけではないということを学生にも知らせなければなりません。どこに問題があって何を改善しなければいけないのか、根拠となるデータが必要です。1年生の最初の試験結果から、過年度の蓄積したデータを基に、この時点でこの点数だと将来的にどうなる可能性が高いのかを酷ですが伝えます。そこから奮起して頑張る学生もいますから」

 その上で、やる気のある学生に対しては手厚く、手取り足取り教育していく。学生が覚悟を持って取り組むなら、最大限のサポートをしていく構えだ。

 ◇最新のシミュレーターやAIを積極的に活用

 実習室は最先端の治療機器やシステム、シミュレーターを豊富にそろえ、医療機関や福祉施設のリアルな環境を再現している。

 「全国共通で行われる共用試験(本学は第4学年終了前に実施)に合格して臨床実習に進めば患者さんの治療もできるようになりますが、いきなり患者さんの口の中を触るわけにはいきません。模型やシミュレーターを使って訓練します。ヒト型ロボットのシムロイドは、実際の患者さんを想定して声や動作でさまざまなリアクションをします。高齢女性をモデルにしたものがあるのは全国でも本学だけです」

歯科教育を行う多職種連携シミュレーション実習室には、ヒト型患者ロボット「シムロイド」が導入されている

歯科教育を行う多職種連携シミュレーション実習室には、ヒト型患者ロボット「シムロイド」が導入されている

 車いすに乗った患者さん、ベッドに寝たきりの患者さんなど、さまざまなシチュエーションに応じた医療・歯科医療行為のトレーニングができるのは、リハビリテーション科学関係の専門家もいる医療系総合大学ならではのメリットと言える。

 また、文部科学省の数理・データサイエンス・AI教育プログラム リテラシーレベルプラスに、医療系大学で国内唯一の選定校となっている。仮想現実(VR)を駆使して訪問診療の遠隔トレーニングを行うなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)を用いて新しいチーム医療への取り組みについて理解を深める工夫を行っている。

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