歯学部トップインタビュー

時代の変化に対応できる歯科医に
~シミュレーション教育で臨床の力を育む―朝日大学歯学部~

 朝日大学歯学部は、1971年に歯科医師の宮田慶三郎氏が地域の歯科医師不足の解消を目指して創立した岐阜歯科大学に始まる。85年に朝日大学に名称変更し、経営学部、法学部、保健医療学部を開設した。埼玉県の明海大学とは姉妹校。JR穂積駅からスクールバスで約5分、東海道新幹線の岐阜羽島駅からは車で20分ほど、勉強に集中するには最適の環境にある。田村康夫副学長・歯学部長は「歯科医を目指すためには知識も必要ですが、多職種連携を行う上では協調性も大切です。歯科医師国家試験に合格するためには、『歯科医師になりたい』という意欲を持つことが最も重要です」と話す。

田村康夫副学長・歯学部長

田村康夫副学長・歯学部長

 ◇臨床教育に役立つ実習施設が充実

 朝日大学歯学部は、臨床に強い歯科医師を育成するため、基礎から臨床まで広範囲の学修に対応する実習施設が充実している。

 例えば、基礎実習では病理標本を高速でスキャンしてデジタル化し、パソコンの画面上で観察できるバーチャルスライドシステムを活用する。シミュレーション実習室には、問い掛けに返答する人間型ロボット(シムロイド)が備えられ、人間の口腔(こうくう)内と同じような感触で歯科治療のトレーニングを行うことができる。

 バーチャルシミュレーター(シモドント)は、手首で方向を変えると画面が動いて、さまざまな角度で歯を削ることができる上、むし歯を削る感触や振動まで伝わってくる。

 「歯の表面は硬くて、中の方は軟らかい、削り過ぎると神経に到達する感覚まで手元に伝わるよう再現できる高性能なものです。実際に患者さんの歯を削るわけにはいきませんから、こうした最先端の機器を活用して、できるだけ実際の臨床に近い形でのトレーニングができる環境をつくっています」

朝日大学医科歯科医療センター

朝日大学医科歯科医療センター

 ◇三つの施設で幅広い実習に対応

 特徴の異なる三つの医療施設(医科歯科医療センター、朝日大学病院、PDI岐阜歯科診療所)があり、幅広い臨床実習ができるのも大きなメリットの一つだ。

 高齢者を対象としたオーラルフレイル予防指導や在宅療養中の患者への訪問歯科診療、全身疾患のある患者や手術を受ける患者の術前・術後の口腔ケアも経験できる。PDI歯科診療所は卒後研修施設として設けられたもので、小児歯科、矯正、口腔外科など一般の歯科治療全般をじっくり学べるよう多数の診療台を備えている。

 ◇歯科医になりたい意欲ある学生を求む

 多様な入学選抜試験を行い、面接重視で学生の資質を見極める。例えば、岐阜ならではのネーミングでインパクトを狙った信長入試(旧AO)では、特に歯科医師になる意欲の旺盛な学生を集める。また、他の大学を卒業し、社会人になってから受験する学生の枠も設けている。

 「30~40代で入学してくる学生もいますが、本当に意欲的で優秀です。『家が歯医者で何となく』という漠然とした志望動機では、厳しい国家試験に合格するのは難しい。中にはせっかく入学しても途中であきらめる学生も出てきます。大学としては、挫折する学生をできるだけつくりたくない。そのためには、『歯医者になりたい』という強い意志を持った学生に来ていただきたいですね」

玉置幸道教務学生委員長

玉置幸道教務学生委員長

 ◇仲間をつくりやすいようグループ学習を導入

 入学直後は、高校を卒業したばかりの学生に基礎的な学力を補うため、少人数グループで学ぶアクティブラーニングを導入している。また、1~4年までを縦割りのグループにし、先輩・後輩の関係の中で分からないことを教え合う仕組みもつくった。

 「最近の学生はSNSなどを通したコミュニケーションが主体で、基本的に家にこもりがちです。やはり、コミュニケーション能力を磨くためには、実際に言葉を発して人の意見を聞くということが必要です」と玉置幸道教務学生委員長は説明する。

 2016年から新たに、地域医療の現場を知るためのプログラムを導入した。1年生の夏季休業期間中、一日歯科医院で歯科医師の仕事を見学する。2年生では特別養護老人ホームで口腔から食べることの大切さを学び、3年生では病棟の入院患者への歯科医師の関わりを学ぶ。

 「学年ごとに場面が難しくなってくるスパイラル教育となっています。段階を経て、4年生で一通りの歯科医療の教育が終わる仕組みです。5年生になると臨床実習が始まりますから、そこでは実習用ロボットなどを駆使して治療技術を学びます」

 ◇費用は学校負担で海外留学

 5年生の夏季休業期間中に、姉妹提携している海外の大学(UCLAなど21大学)と交換留学を行っている。姉妹校の明海大学と共同で行っているプログラムで、毎年30人以上が参加するが渡航費用は全額、大学が負担する。

 「国際未来社会を切り開く人材育成は建学の精神の大きな柱の一つになっています。このプログラムに参加することを目標に受験してくる学生も多いです」と田村歯学部長。

 このプログラムが評判を呼んで、姉妹提携をしていない海外の大学からも「学生を留学させたい」と申し出があるという。

 「帰国後は学生たちのモチベーションも非常に高くなりますし、海外から受け入れた留学生たちの存在も大学だけにとどまらず、地元の学生たちにいい刺激になっています。非常に力を入れているプログラムなので、可能な限り続けていきたいと思います」

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