治療・予防

皮膚病以外の病気でも症状
~難治性のかゆみ(順天堂大学大学院 冨永光俊先任准教授)~

 蚊に刺されて、かゆくて物事に集中できない経験をした人は少なくないだろう。激しいかゆみが続いたり、就寝中にかゆくなったりすれば、生活への影響が大きい。かゆみの解明に取り組む、順天堂大学大学院環境医学研究所・順天堂かゆみ研究センター(千葉県浦安市)の冨永光俊先任准教授に話を聞いた。

難治性のかゆみ

難治性のかゆみ

 ◇腎臓、肝臓病など

 「かゆみは体にとって必要な感覚。かゆい部分をかいて異物を除去し、その侵入を防いでいると言えます。体内の異常を知らせる警告の役割もあるでしょう」と冨永先任准教授。

 かゆみを起こす物質としては、自然界や体内にあるヒスタミンなど約40種類が知られている。かゆみを感じる神経に働き、通常よりも症状を強く、または弱くする調節物質には、オピオイドをはじめ少なくとも7種類あるという。

 アトピー性皮膚炎のように皮膚が乾燥している場合は、かゆみを感じやすい。「かゆみの神経が皮膚表面のすぐ内側まで来ていて、外界の刺激を受けて容易に興奮するからです」

 皮膚以外の病気でもかゆみが出ることがある。原因としては、「腎機能が低下し、人工透析を受けている患者や肝臓病の患者は皮膚が乾燥している。それにとどまらず、調節物質のオピオイドなどが病気ごとに、さまざまな程度でかゆみに関係しているようです」

 かゆみを感じやすく

 治療は、ヒスタミンの働きを阻害する抗ヒスタミン薬が中心だが、他の物質に焦点を当てた薬もこの15年間にいくつか実用化され、難治性のかゆみに使われている。

 例えば、かゆみを誘発する「IL―31」の働きをブロックする注射薬が、アトピー性皮膚炎を対象に昨年承認された。透析や肝臓病に伴うかゆみにも飲み薬がある。いずれの薬も効果を維持するには治療を続ける必要がある。副作用があり、薬によっては医療費もかさむ。

 同研究所は今年、通常ならかゆみを起こさないわずかな刺激でも感じる「かゆみ過敏状態」の有無を推測する指標を見いだしており、「難治性のかゆみを解明する一歩になる」としている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】


新着トピックス