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子どもの「腸活」が大事なわけ
~多様な菌が心身を健康に~

 ◇好きな食べ物は腸内細菌が決める?

 緊張やストレスの緩和といったメンタルコントロールにも、腸内細菌が関わっていることが分かってきている。現在注目されている話題で、「脳腸相関」という言葉が知られるようになった。

 慶応義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授は「脳と腸は四つのルートでつながっている」と言う。自律神経の一つである迷走神経、ホルモン、リンパ管や粘膜を移動する免疫細胞、そして腸内細菌が作る代謝物質だ。

「将来は大人も子どもも、手軽に腸内デザインができるようにしたい」と目標を語る福田特任教授

「将来は大人も子どもも、手軽に腸内デザインができるようにしたい」と目標を語る福田特任教授

 おなかの調子が悪いと気持ちが落ち込む。ストレスや緊張を感じると、おなかが不調になる。また、睡眠不足や食生活が乱れた際、腸内細菌のバランスが乱れることもある。

 食の好みも、腸内細菌に左右されているかもしれない。「例えば『おふくろの味』。実家を離れてから当時のメニューを懐かしい、食べたいと思うのは、今までの食事内容が腸内細菌の餌となっていたためではないかと推測している。食の好みに腸内細菌が影響しているという動物実験での研究報告もある。腸内細菌の声を聞いて食を選ぶという方法が成り立つのではないか」と福田特任教授。冨士川さんも「食欲は腸内細菌が影響しているのではないかと仮説を立てている」と明かす。

 ◇腸内細菌が持つ可能性

 冨士川さんは「腸内細菌の多様性は、大人になってからでは取り戻せない。腸活は便通と同一視されがちだが、健全な成長全てに関わっている。もっと知ってほしい」と言葉を強める。

 福田特任教授も「最新の科学技術を用いて自分の腸内環境を知れば、自分の腸に何を届ければいいかが分かるため、体調管理や病気に強い体づくりをスムーズに進められる」と語る。近い将来には「腸内細菌をコントロールしてストレス耐性を高めたり、自分の体質に合う薬を選んだりできるようになるはずだ」と進行中の研究の社会実装に意欲を示しており、今後さまざまな成果が得られるかもしれない。(柴崎裕加)

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