治療・予防

突然、片目が見えず
脳梗塞前兆の一過性黒内障

 突然幕が下りたように片方の目が見えなくなる―。こうした症状が表れたら、脳梗塞の前兆である「一過性黒内障」の恐れがある。「視力はすぐに回復しますが、早急に神経内科や脳神経外科のある総合病院を受診してください」と、京都府立医科大学付属病院(京都市)神経内科の尾原知行医師は警鐘を鳴らす。

 ◇一時的な視界不良

 一過性黒内障は、頸(けい)動脈から枝分かれした眼動脈に血栓が詰まることで起こる。眼動脈は左右の目にあるが、両方が同時に詰まることはまれで、片方の目にだけ症状が表れやすい。

 血管が詰まる原因は、長年にわたる高血圧糖尿病、脂質異常症などによる頸動脈の動脈硬化が最も多い。動脈硬化を起こしている血管の内側には脂肪や血栓がたまっている。血栓が剥がれて脳に向かって流れて行く先の一つに、眼動脈がある。

 剥がれ落ちる血栓は非常に微細でもろいため、眼動脈をふさいでも溶けて消失することが多い。そのため、血流が阻害されるのも一時的で、目の前が真っ暗になるという症状は多くの場合、5~10分で解消する。

 ◇薬や手術で早期治療

 一過性黒内障は、すぐに症状が消える一過性脳虚血発作の一種だ。脳の血管が一時的に詰まることで、手足のしびれや言語障害など脳梗塞と同じ症状が伴うことがある。一過性脳虚血発作では治療をしないと3カ月以内に10~15%が脳梗塞を発症するとされ、一過性黒内障も将来的に脳梗塞を起こす恐れがある。

 尾原医師は「一過性黒内障は脳梗塞の警告発作の一つ。早期に脳梗塞の予防を目的とした検査、治療が必要です」と話す。

 一過性黒内障が疑われた場合、頭部の磁気共鳴画像装置(MRI)や頭頸(とうけい)部の血管を画像化する磁気共鳴血管造影(MRA)、頸部血管超音波などの検査を行い、原因に合わせて抗血小板剤や抗凝固剤などの薬を飲み、脳梗塞を予防する。頸動脈に重度の狭窄(きょうさく)が認められた場合は手術で血管を広げるなどの動脈硬化の治療が行われる。

 「片方の目が一時的に見えなくなるようなことが一度でもあれば、病院を受診してください。特に、症状が10分以上続いたり、手足がしびれる、ろれつが回らないなどの症状が表れたりしたら、脳の血管も詰まっている恐れがあります。すぐに救急車を呼んでください」と、尾原医師は注意を促している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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