インタビュー

在宅医療、城谷典保医師に聞く(上)=CureからCareへ

◇新たな医療システム

―人口の変動で、医療需要が大きく変わるということですね。高齢者が必要とするのはどのような医療なのでしょうか。
 城谷 20世紀の医療は技術の進歩が目覚ましく、専門医がもてはやされていました。確かに高度な医療技術により今まで救えなかった多くの命が救えるようになりました。近年、最先端医療は行き着くところまで行き、いわば「神の領域」に入っています。しかし、実際には治らない病気の方が圧倒的に多いのです。高齢者の比率が増していく中で、加齢による治らない病気とどう付き合って生活していくかが大事。高度な手術や高価な薬で延命するのではなく、日々の生活を助けてくれる医療の方が必要とされるのです。日本の社会保障制度が始まったのは1960年からで、間もなく60年になります。ここで転換させないと、必要とされない医療にお金と人をどんどんつぎ込むことになり、50年後には高齢者の医療どころか、健康な若い人が普通の生活を送れないようになるかもしれません。
 地域や住民を巻き込んで進める、地域包括ケアと在宅医療の融合は世界に例を見ない新しい医療システムです。地域やそこに根付く文化や習慣によって手法は違います。各地域が試行錯誤を重ねて確立していくことになります。超高齢社会を最初に迎える日本がこれを成功させることは、世界的な責務であると思っています。

◇ゴールは「看取り」

―在宅医療は従来の往診や訪問診療と違うのでしょうか。病院で医療を受けるのと、自宅で医療を受けるのと、大きな違いは何ですか。
 城谷  往診は突発的な急病を発症した時に、患者や家族の要請に応じて居宅に訪問します。訪問診療は通院が困難な患者に対して、定期的に居宅を訪問します。通常、在宅医療は訪問診療を指しますが、在宅医療の場合、介護を必要とする患者が多いため、診療所の医師だけで完結するのではなく、訪問看護ステーションの看護師、歯科医師、介護スタッフ、薬剤師、ケアマネージャー、理学・作業療法士らと連携した上で、ケアプランに基づき医療と介護に当たります。医師の役割はこの一部にすぎません。
 病院診療と在宅医療には大きな違いがあります。病院の診療は治癒を目指すことが前提です。一方、在宅医療は病気を治すことではなく、病気と共存する生活を支援する医療です。病気による苦痛や不自由さをできる限り取り除き、患者さんに寄り添って生活しやすいように支える、そして、そのゴールが「看(み)取り」です。
 2014年に厚労省が行った患者調査によると、約6割の人が自宅で最期を迎えたいと思っています。地域や社会から隔離され、自由が束縛される病院ではなく、住み慣れた場所で最期を迎えたいと考える人が多いのだと考えています。患者が居宅での看取りを希望すれば、患者の尊厳を最優先し、それに応えるのが在宅医療です。


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