インタビュー

在宅医療、城谷典保医師に聞く(上)=CureからCareへ

 高齢者が住み慣れた地域で、尊厳を持って最期まで自分らしい生活を送れるよう支援する地域の仕組みが「地域包括ケア」だ。この中で要介護者支援の中心となるのが「在宅医療」で、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて全国各地で体制づくりが進められている。その現状と課題はどうか。外科医として大学病院で長年、消化器がんの急性期治療に従事する傍ら、在宅医療支援を行い、現在、在宅医として地域医療の現場に向き合っている日本在宅医療学会理事長の城谷典保医師に聞いた。

―超高齢社会に向けて、国は病院診療ではなく、在宅医療を推進しているのはなぜでしょうか。
 
城谷 医療技術の進歩や検査技術の向上により、がんや脳卒中、心臓病など、かつては死因の上位を占めていた疾患でも、早期発見や手術により助かるケースが増え、その後はリハビリや療養生活を続けながら、長期的に生活を継続することも可能となりました。急性期病院で手術をしても、完全に治癒するわけではなく、そこから生活を維持しなければならない期間が長いのです。
 在宅医療はもともと長期入院による医療費を抑制するために推進されてきましたが、厚生労働省の長期推計によると、医療費の伸びは必ずしも抑えられないことが示されています。2060年に65歳以上の高齢者は40%に達すると予測される一方、2040年をピークに緩やかに人口減少が始まります。
現在1億2000万人の日本の人口が、2065年には4000万人減の8000万人になるということです。その中で高齢者の占める割合が半数近くになると、求められる医療の内容も変わってきます。50年という長期的な視点に立てば、新たに病院を造って当面の医療需要を賄うよりは、在宅医療制度の充実に注力する方が合理的だからです。


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