インタビュー

在宅医療、城谷典保医師に聞く(上)=CureからCareへ

◇医師は価値観転換を

―患者にとって、在宅での医療は医師不足、医師の技量や設備面で不安なところもあります。現状はどうでしょうか。
 城谷 厚労省は診療報酬を手厚くするなど、在宅医の確保を進めています。しかし、在宅患者の急増が見込まれる中で、在宅医の数は十分とは言えません。実際、自宅での看取りを希望したとしても、8割以上の人は病院での看取りとなっています。
 在宅医の確保を難しくしている理由の一つは、在宅医は365日24時間体制で在宅患者に対応する必要があり、医師が1人の診療所では身体的に負担が大きく、事実上困難なのです。複数の診療所で提携し、当番制で協力しながら、夜間や休日対応をすることが推奨されていますが、患者の病状をしっかりと共有し診療方針を一致させる必要があります。それが現状ではまだうまくいっていません。
 二つ目の理由は、医師のメンタリティーの問題です。日本の医療は、「治す」ことを目指して行われています。「治らない」ことは医師の敗北とされ、治癒しない患者に対しては積極的に関わろうとしない風潮があります。患者の大半が高齢者である現在の在宅医療は、治らない患者に対し、病気と共存しながら苦痛のない生活ができるようサポートする医療サービスです。医師が価値観を「Cure(治療)」から「Care(介護)」へと転換し、人の最期に向き合うという、より高尚な哲学が求められます。日本の医学部教育で在宅医療を教えているところがほとんどないことも、医師が在宅医療に向かわない原因と言えます。
 少し時間はかかりますが、全国各地で地域包括ケアシステムを強化するプロジェクトは着々と進んでいます。「かかりつけ医=在宅医」となる日も遠くないかもしれません。

〔インタビュー後半へ〕痛み抱える人を地域で守る=「緩和ケア」新たな取り組み


城谷典保医師 睦町クリニック、恵比寿クリニック理事長、日本在宅医療学会理事長 
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(記事はソーシャライズ社提供)

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