(第2回)注目されるイスラエル医療システム
日本と違う国民皆保険制度
次に、医療機関を組織化することは、医薬品や医療機器の集中購買を可能にします。これはイメージしやすいと思います。集中購買により購買力が向上するとともに、組織全体で無駄のない在庫管理を可能にします。
最後に、医療情報を組織化することは、各医師の診療行為のモニタリングを可能にし、医療サービスのクオリティーやコストに対する意識を高めます。また患者情報が時系列に蓄積され、いつでもすぐに把握できることは、的確な診療を行う上で大きな助けになります。
これらは一例に過ぎませんが、医療スタッフ、医療機関、医療情報を大規模に組織化することが、医療の効率性につながることは理解できると思います。昨年、Clalitの主要病院の一つ”Rabin Medical Center”を訪れ、Clalitの医療システムに関する講義を受けた際は、特に高度なITシステムの連携に力点が置かれていました。ITシステムを通じた患者情報の共有とさまざまなサポートツールが、医師を含め医療スタッフの業務に大きく貢献しています。
◇効率化追求への期待
医療の効率性で評価されている日本ですが、高齢化による医療費の増加に対応するため、今後より一層の効率化が求められます。その際に、Clalitのように医療スタッフ、医療機関、医療情報を大規模に組織化していくことは、一つのアプローチになり得るかもしれません。(CDIメディカル・杉本宗優)
株式会社CDIメディカルは、国内初の独立系経営戦略コンサルティングファームであるコーポレイトディレクションが設立した、メディカル・ヘルスケアに特化した経営戦略コンサルティングファームです。 業界に関する専門的知見と、国内外医療関係者との密接なリレーションシップを基盤として、企業や医療機関の経営課題を解決すべく、さまざまなサービスを提供しています。
◇本社所在地 東京都品川区東品川2-2-4 天王洲ファーストタワー23階 電話03(5783)4130
杉本宗優(すぎもと・むねまさ) 株式会社CDIメディカル副査、イスラエル・ドイツ医療機器担当。慶応義塾大学総合政策学部卒、ワシントン大学オーリン・ビジネススクール(MBA)、KPMGあずさ監査法人、ノバルティスファーマ株式会社経営計画部を経て現在に至る。
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(2018/03/03 16:00)