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(第2回)注目されるイスラエル医療システム
日本と違う国民皆保険制度

 イスラエルは、中東の地中海に面する人口およそ800万人の国です。エルサレムに関する米国のトランプ政権の動向が注目されている通り、エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地とされており、歴史的に非常に重要な場所です。

 そのイスラエルは、医療の分野でも注目されています。2013年に米国の情報サービス大手ブルームバーグは、世界各国のGDPに占める医療費の割合、国民1人当たりの医療費、および平均寿命に基づき、医療システムの効率性に関する調査を公表しました。その結果、イスラエルの医療システムは、香港、シンガポール、日本に次いで、4位にランクインしています。日本およびイスラエルは、医療の効率性について、世界的に高く評価されています。

 本コラムでは、日本と比較したイスラエルの医療システムの特徴に焦点を当て、効率的な医療を実現するイスラエルならではの仕組みについて考えます。

 ◇非政府、非営利、4つの健保組織

 日本とイスラエルは、いずれも国民皆保険制度を採用している点で共通しますが、その運用方法に違いがあります。日本では、国民は各人の勤務形態などに基づき、国民健康保険、協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などに加入します。一方イスラエルでは、国民は4つの”HMO(Health Maintenance Organization)”のいずれかを選択し、加入します。

 4つのHMOは非政府、非営利の健康保険組織であり、加入者に対して、法律で定められた基本的な医療サービスを提供することが義務付けられています。運営資金は、加入者数、年齢構成などを加味して、政府から配分されます。

 HMOの大きな特徴は保険組合機能だけでなく、医師をはじめ医療スタッフを雇用し、実際に医療機関を運営していることでしょう。最も規模の大きいHMOである”Clalit”は、3万人を超える医療スタッフを雇用し、14病院、1200クリニックを抱えています。そのため各医療機関同士はITシステム、患者情報を共有することが可能になります。Clalitは現在国民の約半数に当たる380万人の加入者に対して、共通のプラットフォームに基づき医療サービスを提供しています。

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