CDIメディカル医療インサイト

中小企業が支えるドイツ医療機器
国が後ろ盾、政府予算投入

 欧州経済をリードするドイツは、医療の世界でも高い技術で有名です。かつてドイツの物理学者ヴィルヘルム・レントゲンが発見したX線の単位レントゲン、診療録を意味するカルテなど、今も多くのドイツ語が日本の医療現場で使われています。

 BMI Researchによると、ドイツの医療機器市場は、2015年時点において、米国、日本に続く世界第3位の規模を誇ります。ドイツと聞くと、シーメンスやビー・ブラウンなどのグローバル企業が思い浮かびますが、実は多くの中小企業がドイツの医療機器産業を支えています。1万2千社を超える医療機器企業のうち、95%は従業員250人未満の中小企業です。

 本コラムでは、中小の医療機器企業を支援するドイツならではの仕組みを考えます。
 中小の医療機器企業を強力に支援する存在として、ドイツ全土に張り巡らされた医療機器クラスターネットワークがあります。「集団」を意味するクラスターは、ここでは企業や大学、研究機関、行政などが相互に協力しながら医療機器開発を行うネットワークとご理解ください。全国各地のクラスターに医療機器企業が集積し、ビジネス上のさまざまな支援を受けることができます。クラスターは政府予算により運営されていることから、まさに国を挙げた支援と言えるでしょう。

 具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。ドイツ南部の都市ニュルンベルクを拠点とするクラスター「MEDICAL VALLEY EMN」は、実に包括的な支援をしています。

 医療機器の開発にはまず、資金、設備、研究施設が必要です。MEDICAL VALLEY EMNは、長年にわたり構築したネットワークを生かして資金調達機会を紹介するとともに、自らも資金を拠出します。実際に10年以降の5年間で、100億円近くの資金を、さまざまな開発プロジェクトに拠出しています。また美しい研究施設を運営し、医療機器開発に必要なインフラを提供します。

 開発アイデアに磨きをかけるため、人的交流にも力を注いでいます。MEDICAL VALLEY EMNが企画するイベントやワークショップを通じて、エンジニア、IT専門家、科学者が、医師やその他医療専門家と意見を交わし、顧客視点に立った医療機器開発が進められます。共同開発が立ち上がることも少なくありません。

 また開発した医療機器を世の中に送り出すため、MEDICAL VALLEY EMNの薬事専門家が、当局への医療機器承認申請や保険償還取得に必要な対応を指導します。近年はドイツ国内だけでなく国際的なビジネス展開に向けて、各国の現地ビジネスパートナーを紹介するなど、支援の領域を拡大しています。

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