インタビュー

どうする応急手当て、自助と共助の心構えは
阿南英明・藤沢市民病院救命救急センター長【南海トラフ災害医療・下】


 ◇トリアージで決まる治療の優先順位

 例えば、大地震の揺れで隣の家がつぶれて、はい出てきた中年男性の足が「くの字」に曲がり、若い女性が腕や唇に擦り傷を負っている、とします。あなたならどうしますか。

東京消防庁などの震災訓練で、トリアージを行う救急隊員ら=2014年10月
 講演で会場の人にこう聞くと、皆さん、119番すると言います。でも、消防には同じような通報が殺到しているはずだし、そもそも通信インフラが途絶え、道路が渋滞している恐れもある。大地震では火災の延焼防止に全力投球するので、救急車は出せないとホームページ(HP)で公表している市もあります。

 病院へ行っても人があふれ、いつ診察してもらえるかは分かりません。医師が言うのも変ですが、病院にはなるべく行かないでください。医師でないと対応できない重傷患者だけに対処させてください。

 誰を優先的に治療すればいいのか決めることを「トリアージ」と言います。もしも被災で負傷したら、医師や救急隊員らにトリアージを受けます。病院では普段なら受け付けの順番で診療を受けるのに、自分よりも重傷の人がいれば100人でも200人でも順番を抜かれます。

 トリアージでは原則として、迅速な救命が必要な重傷患者の右手首に「赤」タグを付けます。先ほどの中年男性は「黄色」区分に当たり、大災害時なら搬送は急がないと知っておいてください。翌日に骨を戻し、1週間後に手術したりすればよいからです。

熊本地震の際、避難者の診療に当たるDMAT隊員(兵庫県災害医療センター提供)
 若い女性の擦り傷は「緑」の区分に当たり、災害時には病院に行ってはいけないと判断してもらいたい。「黒」は呼吸停止で優先順位が最も低いという判定です。


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