インタビュー

どうする応急手当て、自助と共助の心構えは
阿南英明・藤沢市民病院救命救急センター長【南海トラフ災害医療・下】


 ◇ぬれた服は脱ぐ、止血や骨折固定は自分で

 では、災害直後、自分たちでできる応急手当てには、どのようなことがあるのでしょうか。

 擦り傷や切り傷は止血が重要です。血が出ていたら傷を圧迫するのが基本で、普通は5分、10分で血は止まります。血が出ない傷に対しては、細菌などに感染するとよくないので、水道水で洗ってください。特に怖いのは破傷風菌です。

 腕や足のやけどなら、水道水で30分間ほど冷やしてください。ただ、体幹部のやけどで同じようにすると低体温症になる恐れがあり、医療機関の対応が必要です。川の水は清流でも感染の恐れがあるので使わないでください。

 足首が「グキッ」となったとき、痛かったら骨折か靱帯(じんたい)の損傷です。骨折は添え木で固定すると、魔法をかけたように楽になります。新聞紙をくるくると丸めて締め、棒のようにした物でも添え木代わりになります。折れた骨で血管が圧迫され脈が弱くなる、神経が傷ついて指先などの感覚がなくなるといった場合や、骨が皮膚を突き破っている(開放骨折)の場合、気づいたら早めに医療機関に行く必要があります。

沿岸部で最も心配な津波は、逃げ切れれば、重傷を負う割合は多くはありません。しかし、ぬれた服を着たままだと、どんどん体温が奪われます。乾いた布などで体を包み、温めてください。体が冷えると免疫力が落ちて、インフルエンザなどの感染症にもかかりやすくなります。

 最後になりますが、災害急性期でも、医療よりも先に生活の問題があります。衣食住が足りないと軽傷患者でも死んでしまいます。食べ物がない、水がない、暖房が切れるといった問題があれば、みんな体調を崩していきます。

一番問題になるのは水で、給水車が来るというイメージを持つのは非常に危ない。所によっては数カ月間、水道が復旧しないこともあり得ます。日頃から、大きなペットボトルに水を入れておき、毎日交換することをお勧めします。

 困ったとき、行政に頼むことばかり考えがちですが、地域やマンションの自治会は平時から、被災時に助け合うための体制づくりをする必要があります。そのとき、自助と共助で対応するため、こういった物を用意した方がいいのでお願いしたい、というように、平時の支援を行政に依頼することが大切。その支援を「公助」と捉えてほしいと思います。(聞き手・構成=水口郁雄)

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