Dr.純子のメディカルサロン

「人間力」を高め、世界を相手にする医師に
藤川眞理子・市原保健所所長

 海原 若い医師に伝えたいことをぜひ聞かせてください。

 藤川 プロフェッショナルとして自信を持って働くことができるように医師としての技量を身に付けるべく努力するのは当然です。それだけでなく、研修医時代には海外の学会で発表するといった学究生活や、WHOなどの世界に触れることをおすすめします。山中伸弥先生やWHOメディカル・オフィサーの進藤奈邦子先生のように世界を相手にする医師が増えてほしいと思います。

 医学部が異常なくらい超難関になって苦労して入学する人がいる一方で、進学校からさほどの苦労なく入って医師になる人もいます。いずれにしても良くも悪くもエリート意識が身に付いてしまうのは当然のことと思います。かつて保健所実習で出会った研修医は職員に対する上から目線がひどく、私は戦慄(せんりつ)を覚えました。幸い少数でしたが。

 若い医師に最も伝えたいことは「人間力」も高めてほしいということです。臨床でも行政でもやりがいを感じて働くためには、コメディカルや事務職などの部下や上司と信頼しあえる関係をつくり、リーダーシップを発揮することが必要です。山中先生は偉ぶらずユーモアもあって魅力的です。医師の肩書がなくても人間として魅力のある存在、品格のある人間になってほしい。

 最後に、特に若い女性医師には、保健所での公衆衛生医師という働き方もあることをぜひ知っておいてほしいです。将来、子育てに悩んだり、離婚したり、介護問題に直面したりして臨床での通常勤務が難しくなった場合、いったん保健所勤務に「避難」する手があります。所長でなければ1年以上の産休を取ることもできます。公務員なので決まった時間帯で勤務でき、男女差別もないのが保健所の就労環境です。専門科が何であっても慣れるので大丈夫です。千葉県内には元乳腺外科医で子育て奮闘中の4児の母など、女性医師が多く働いています。仲間が増えたらうれしいです。

(文 海原純子)



藤川眞理子(ふじかわ・まりこ)

東京都出身。北里大薬学部卒、東京女子医大卒、富山医科薬科大大学院修了。医学博士。千葉県市原保健所所長、日本糖尿病学会専門医、厚生労働省地域の健康増進活動支援事業審査委員、東京都医師会生活習慣病対策委員会委員、東京女子医大・千葉大非常勤講師。



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