(第8回)拡大する薬剤師の役割
在宅医療現場の「チーム医療」
大須賀 在宅医療現場の薬剤管理業務は、主に保険薬局の薬剤師が担っています。厚生労働省が2010年にまとめた「患者のための薬局ビジョン」の中で「かかりつけ薬剤師・薬局」の機能を定義していますが、その機能の一つに在宅医療への対応、具体的には24時間の対応や在宅患者への薬学的管理・服薬指導も含まれています。
私が働く在支診でも、保険薬局が扱える薬剤に関しては、全て院外処方で対応してもらっていますので、地域の保険薬局の薬剤師が患者さんのお宅を訪問して薬を届け、服薬管理を行っています。
その中で私の業務は、一般の方には非常にイメージしにくいかと思いますが、「患者さんが在宅で薬物治療を行うための体制を整えるコーディネーター」と言ったところでしょうか。
具体的には、在宅医療開始にあたって在宅医や訪問看護師の初回往診に同行し、患者さんの状態、今後の治療に関するご意向、これまでの処方薬や服薬管理状況を把握します。
その上で、患者さん本人やご家族の対応力を踏まえながら、在宅で継続的に管理可能な処方内容を医師と相談し検討していきます。方針が決まると在宅で薬物治療が継続できる体制を整えるため、必要であれば訪問薬局(患者の自宅に薬を届け、服薬指導を行う保険薬局)を選定し、患者さんにつなげます。
在宅医療は、診察や看護の質をどんなに高めても、薬剤が無くては患者さんのケアができません。私は、患者さんが在宅医療をスムーズに開始するために、調剤、訪問服薬指導を担う訪問薬局を探します。また、スムーズに服薬指導が開始できるよう患者さんの承諾を得て、これまでの服薬状況をまとめ訪問薬局に情報を提供します。
◇異なる患者の情報量
--患者さんと地域の訪問薬局をつなぐ上で、どのようなことを重視されているのでしょうか。
病院の場合、患者さんの病状はカルテ情報を閲覧したり、他のスタッフが情報提供したりするので、患者さんの状況に沿った指導が可能です。
訪問薬局は、診療をしている在支診とは別組織のため、自由にカルテ情報にアクセスできません。処方箋に記載されている薬剤情報をもとに指導を行いますが、処方箋には患者さんの病名や既往歴の記載欄は全くないのです。そのため、訪問服薬指導は、訪問薬局の薬剤師が患者さんのご自宅を訪問して情報収集することからはじまります。
非常に手間と時間を要しますし、患者さんの安全を守るためにも、情報を聞き逃すことはできません。訪問薬局の時間的ロスを極力削減し、スムーズに業務が開始できるよう、私があらかじめ情報提供を行っています。処方箋からだけでは推察できない患者情報の追加提供、訪問時の変化等を積極的に共有し連携を図っています。
(2018/09/01 16:00)