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「県民の総意」で創設-秋田大医学部
 シームレスな医療教育で注目

 ◇東日本で1、2位の規模

シミュレーション教育センターでの臨床実習
 臨床教育強化の一環でシミュレーション教育センターを導入した。2012年の完成当初は「東日本で1、2位の規模」を誇った。飛行機パイロットの育成用コックピットのように、さまざま病態を疑似の人体にプログラムで再現し、処置を習得できる施設だ。「私たちの時代は学生がお互いに採血実習などをやった」というが、現在はシミュレーターで一通り練習してから臨床実習を受ける。用具を使って臨床状況をシミュレートすることにより、さまざまな医療現場での対応能力を養うことができる。

 このシミュレーションセンターは地域の医師にも開放。「新しい分野にチャレンジするといった目的のために、さまざま病院のチームが練習に来ている。稼働率は高い」と言い、地域医療のレベルアップにも貢献している。

 ◇目指した救急医療

 尾野医学部長は、心臓電気生理学の研究者としての歩みが長いが、医学部卒業時には麻酔科を選択した。「医学生の時はどこの科も面白かったが、救急医療に強い興味を持ち、救急に行くなら基礎的なトレーニングとして麻酔科がよい」と言われたのが理由だった。

 麻酔科医として4~5年を過ごした後、「教授から『少しは研究もしなさい』と促され、それっきり研究をしている」と、ほほ笑む。「一個の細胞が活動しているのを見ると不思議だと思う。それを見ているだけで面白かった。臨床も好きだったため一時は悩んだ」というが、最終的に「研究はすぐに手に入るものでない。せっかくのチャンスだ」と思い、研究を続けてきた。

 ◇母国語が違う研究室

 東西冷戦の末期、西ドイツに留学。この時、「研究室では(留学生の)母国語が違う。ブロークンイングリッシュでも皆、気にしない。意思が伝わればいい」と、身をもって感じた。また、ベルリンの壁崩壊を現場で経験した。

秋田大学の正門
 当時を懐かしそうに振り返りながら尾野医学部長は「ネットなどで調べるのと、そこで体験、生活するのは違う。チャンスがあれば(海外へ)行けと言っている」と言い、留学などを通じて視野を広げるよう学生に求めている。秋田大医学部は、国際的に働きたいといった希望を持つ学生のための留学制度があり、年間10人ほどが短期留学している。

 ◇地域に根差した教育

 秋田大医学部の特徴として尾野医学部長は「創設の意思を引き継いだ、地域に根差した教育」を挙げた上で、これからの医学生には「自己研さんを積んでほしい。医療技術は進歩するので一生勉強。そういう気概を持ってほしい」と語る。

 かつて「医療費亡国論」が世に広がり、医療費を抑えるため医学部定員が減った時代があった。そんな時期から30年が経過し、日本は医師不足に陥った。今、その遅れを取り戻そうと急速に入学定員を増やしており、20年後には医師の需給は逆転し、医師不足が解消すると言われる。

 「日本は10~20年後に人口が1億人を切る、今100万人の秋田県は20~30年後に60万人を切ると予測されている。その時、医師は今のように生活できるのか」

 働き方改革の議論もあり、医療をめぐる労働・社会環境は予測がつきにくいが、尾野医学部長は「法科大学院は次々と募集停止や撤退に追い込まれている。歯学部は定員割れを起こしている」ことを例に挙げた上で、「時代の流れで(医療環境が)どうなるか分からない。自分のスキルを高め、勉強し、自分が生きていくためにも努力しなくてはいけない」と力説した。(時事通信社・舟橋良治)


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