医学トップの視座

「県民の総意」で創設-秋田大医学部
 シームレスな医療教育で注目

インタビューに応える尾野恭一医学部長
 戦前から医師不足に悩まされていた秋田県。医療レベル引き上げという「県民の総意」を背景に、秋田大学医学部は戦後初の医学部として1970年に創設された。医師の地域定着をテーマに掲げて開始した、卒業前から卒業後までシームレスにつなぐ医療教育で注目を集め、人形などを使って臨床実技を学ぶシミュレーション教育センターは日本トップレベルの充実度。尾野恭一医学部長に医療教育をめぐる課題、医学生への期待などを聞いた。

 ◇終戦直前に女子医専

 秋田県は終戦直前の1945年4月、当時としては極めて珍しい県立女子医学専門学校を設置している。47年に校舎が全焼して学校も廃止になったが、医師の育成に向けた強い願いの表れだったと言える。戦後初の医学部が秋田県に創設された背景として尾野医学部長は「戦前からの県民の強い希望。これを受けた誘致活動があった。国は県に動かされた」と強調した。

 秋田市内の医師充足率は現在、全国平均を若干上回っている。しかし、秋田県は雪国で面積も広大。創設された医学部から医師が輩出されているものの、秋田市以外の医師充足率は平均の半分。医師不足に加えて、医師の偏在もあり、自宅近くでお産ができない地域も出ている。

 ◇国に先駆けて「地域枠」

 国公立大の医学部定員は約10年前に増加に転じたが、それ以前は減らす方向だった。尾野医学部長は「このままでは地域医療が崩壊するとの危機感を持っていた」と言う。

秋田大学の基礎医学研究棟
 「秋田に残る人を増やしたい」-。地域医療を守るため、県内の高校生向けに説明会を開くなどして秋田大の受験を促したほか、国がいわゆる「地域枠」を打ち出す前から、「今でいうAO入試を実施して秋田県の人材を受け入れてきた」。

 加えて、「医療人を育てるには臨床をしっかり教えるのが大事」との考えから、約10年前に臨床重視の教育を打ち出した。入学1年目から臨床を見学させ、英語での対応を含めた問診を学ばせる。

 近年、基本的診療技術の実技試験を卒業試験に組み込むことが全国的に始まっているが、秋田大医学部では「アドバンOSCE(Objective Structured Clinical Examination=客観的臨床能力試験)」として、10年以上前から行っている。臨床実習の時間自体もかつての1.75倍に増やした。

 卒業後の研修制度の充実にも力を入れている。研修医が大学の関連病院や地域の医療機関を回りながらスキルアップするプログラムを構築。「秋田県の関連病院が協力して、地域ぐるみで(研修医を)受け入れている」。卒業後のきめ細かな研修を通じて医師の定着を図るのが狙いだ。