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トキシックショック症候群(TSS)は、黄色ブドウ球菌の出す毒素によって起こる全身性の細菌性中毒だ。産婦人科医が一生に一度、遭遇するかしないかのまれな病気だが、発症すると急激に重篤な状態に陥り、死に至る恐れもある。日本産婦人科医会の常務理事で東京都済生会中央病院(東京都港区)産婦人科の亀井清医師は「早期に治療することで、多くは臓器の機能が壊れる多臓器不全や死亡といった深刻な結果を避けられます」と話す。
◇血液で菌増殖
TSSの症状は実に多彩だ。まず、高熱と共にめまいや吐き気のほか、激しい筋肉痛やだるさなどインフルエンザに似た症状が急激に表れる。その後、数時間のうちに激しい下痢を起こし、続いて48時間以内には低血圧や発疹などが発生する。1週間後の回復期になると、手足の皮がむけてくる。
主な原因は、黄色ブドウ球菌が増殖するときに出す毒素だ。一般には15~40%の人が黄色ブドウ球菌を持っていて、鼻や脇、腟(ちつ)に多く存在している。黄色ブドウ球菌のうち、増殖時に毒素を出すのは全体の4分の1。「TSSは性別、年齢にかかわらず、誰でもかかる可能性がありますが、増殖の鍵を握るのが血液なので、月経のある女性の割合が高い傾向があります」と亀井医師。
腟内に黄色ブドウ球菌を持つ女性がタンポンを使った場合、月経血の多い2~3日目は特に危険度が増すという。一方、ペッサリーなどの避妊具を使っている女性や、分娩(ぶんべん)後6~8週の産じょく期の女性のほか、やけど、水痘、虫刺されや手術後の局所感染もリスクとなる。最近では、鼻の手術をした後に感染のリスクが高まることも分かっている。
(2016/12/13 16:35)
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