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第4回 医院承継のベストタイミングとは
【開業医のためのクリニックM&A】 岡本雄三税理士事務所・MARKコンサルタンツ代表 岡本雄三

 今年も所得税、贈与税の確定申告業務を無事、終えることができました。会計事務所では、例年3月が最も繁忙期となります。

 私の事務所では愛知、三重、岐阜各県の約300件の開業医の確定申告を行っています。

 そのうち、開業3年未満を除く一般診療所と医療法人を見ると、2018年の一般診療所の所得(家族従業員への給与を含む)と17年度の医療法人の役員報酬の計221件の平均所得は6485万円。1億円を超えたのは32件(14.5%)でした。


 ◇医師の高額納税者は大半が開業医

 06年に廃止された高額納税者公示制度(確定申告で所得税の納税額が1000万円超の高額納税者を国税庁が公示する制度)により公示された高額納税者は、03年に7万5285人で、そのうち医師は1万5912人(21.1%)でした。

 04年の高額納税者は7万3389人で、そのうち医師は1万4755人(20.1%)でした。

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)が公表した17年の「第21回医療経済実態調査」では、国立病院の病院長の平均給与は1971万円、公立病院では2065万円、医療法人では3160万円でした。

 このことから、医師の高額納税者はほぼ開業医であることが推察できます。

 上の表は、同調査のうち、個人一般診療所(いわゆる個人開業医)の「利益」に相当する「収支差額」を示しています。このデータは、医師の所得に関する議論で最も引用されることが多いものの一つですが、金額は私の事務所のデータのほぼ半分くらいです。

 ◇理想のタイミングを見極める

 さて、時事的な話題はこれくらいにして、今月からクリニックM&Aを成功に導く六つのポイントを紹介させていただきます。

  初めにポイント1の「M&Aのベストタイミングを見極める」についてご紹介しましょう。

 クリニックM&Aを成功させる秘訣の一つは、「理想の『タイミング』を見計らい、逃さず実行する」ことです。

 開業医の先生向けにセミナーなどをする機会に、いつM&Aを決めるのが正解かを聞かれることがあります。

 恐らく、「民間企業の定年と同じ65歳」とか、「借入金の返済が終わった時」とか、「収益がピークの時」などといった具体的な答えや目安を知りたいと思っての質問でしょう。

 しかし、クリニックをいつ承継するのが正解かという問いには、全ての人に当てはまる共通の答えはありません。 

 ◇大切な事前準備

 何歳まで開業医を続けたいかは、人それぞれで違います。大事なのは、自分が理想とする承継のタイミングを、前もって考えておくことです。

 実際のM&Aの手続きにかかる期間は約1年から2年ですが、だからと言って、売る1~2年前から考えればいいという単純な話ではありません。

 また、忘れてならないのは家族への相談です。院長の家族も心の準備のないまま収入が途絶えるかもしれないことや、仕事がなくなる事実を伝えられれば、人生設計が変わり、不安が募ります。

 それが原因で家庭不和を招きかねません。院長自身の希望をかなえるためには、関わる人たちへの配慮が不可欠です。


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