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ピロリ菌は人の胃の中にすみつく細菌だ。胃がんや胃潰瘍などの発症リスクを高めるとされ、感染していると分かった場合は除菌するのが望ましい。東京大学医科学研究所付属病院(東京都港区)総合診療科の松原康朗講師は「ピロリ菌に感染しても多くの人は自覚症状が出ないので、検査の機会を積極的につくり、早期に除菌を行うことをお勧めします」と話す。
子どもに食事を与える際の家庭内感染に注意を
▽家庭内感染が多数
ピロリ菌は、主に乳幼児期に感染するといわれ、親から子どもに食べ物を与えるときなどに起こる家庭内感染が多い。胃がんへの関与は特に大きく、松原講師は「胃がん患者の約99%は、ピロリ菌感染者と言われています。胃潰瘍や十二指腸潰瘍も、ピロリ菌を除菌すると再発しにくくなることが分かっています」と説明する。他にも悪性リンパ腫の一つである胃マルトリンパ腫や、血中の血小板が減少する特発性血小板減少性紫斑病などの病気も、ピロリ菌が関与している。
松原講師によると、ピロリ菌の除菌には、〔1〕治療〔2〕予防〔3〕感染管理―の三つの目的があるという。「関与している病気を治療するための除菌と、将来的な病気のリスクを軽減する予防を目的とした除菌、他者への感染を防ぐための除菌です」。特に胃粘膜への影響が少ない早期に除菌すると、将来的な病気の予防効果が高いと考えられている。
▽3種類の薬で除菌
ピロリ菌感染の検査には、内視鏡で胃の組織の一部を取って調べる方法と、血液や尿、呼気や便から、ピロリ菌の抗体や酵素反応、抗原を調べる方法がある。除菌は、3種類の薬を朝晩1週間服用する。2種類は抗菌薬、残りの1種類は胃酸の分泌を抑え、抗菌薬の効果を保持してくれる薬だ。服薬終了後4週間以上経過してから、呼気や便で除菌判定を行う。
1回目で除菌できなかった場合は、2種類の抗菌薬のうち1種類を変更して2回目の除菌を行う。それぞれ8~9割が成功するが、松原講師は「ピロリ菌が薬に対して耐性を持っている場合などは、2回の除菌でも成功できない例があります」と話す。3回目を行うことも可能だが、自費診療となる。服薬中は、じんましんや下痢などの副作用が起こったら主治医に相談することと、特に2回目の除菌中は、アルコールを控えることが必要だ。
松原講師は「除菌が成功しても、病気を100%予防できるわけではありません。定期的な胃の検査は受けてください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/05/11 17:00)
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