こちら診察室 医療チームの一員! ホスピタル・ファシリティドッグ
ただそばにいるだけで、力に
~ファシリティドッグと過ごした子どもたち~ 【第10回(最終回)】
小児がんや重い病気で入院している子どもたちを支えるファシリティドッグについて、これまで紹介してきた。最終回の今回は、犬と実際に触れ合う経験をした子どもたちに、どんな関わりを持ち、どんな気持ちになったかをそれぞれ話してもらった。病気と闘う子どもたちにファシリティドッグがもたらした力とは。
〔参加者〕
永山知花さん(17) 東京都立小児総合医療センターに入院経験
宇都宮幹汰さん(13) 国立成育医療研究センターに入院経験
星るるさん(10) 国立成育医療研究センターに入院経験

座談会に参加した(左から)宇都宮幹汰さん、永山知花さん、星るるさん。中央がファシリティドッグのマサ
◇入院中にファシリティドッグと触れ合い
―3人は入院中にファシリティドッグのアイビー(都立小児)とマサ(成育)にどのように出会ったのですか。
永山 小学6年生の夏から中学1年生までの7カ月くらい入院している間、アイビーと過ごす時間を持てました。
宇都宮 入院を3回しました。4歳で発症して6歳で退院したのですが、小学3年生と6年生でそれぞれ再発。マサとは3回目に会いました。
星 2023年10月~24年6月まで入院していました。動物が大好きで、動物園も好きなので、マサと会えてうれしかったです。
―「病院に犬がいる」と聞いて、どんな気持ちになりましたか。
永山 え⁉ 犬がいて平気なのかな…と。
星 ポスターで見て知って、びっくりしました。
宇都宮 「犬がいるんだ。やったー!」って思っていました。
―初めて会った時のことを教えてください。
永山 「病院って、ちょっと怖いな」と思っていました。でもアイビーと会う時は、病室の子たちがみんな笑顔で、アイビーの取り合いみたいになって。「アイビー、こっち来て!」って。明るい病院なんだな、とイメージが変わりました。
星 最初は「うわー、大きい!」と思ったけど、「落ち着くな」と思いました。その時は(体調が悪くて)ぐったりしていたから、寝ながら触りました。「わんちゃんはすごいな」と思いました。
―しんどい時は、犬にもかまわれるの嫌だな、と思わなかったのですか?
星 なりません。逆にうれしくて、ほっとしました。

こども家庭庁で体験談を語るなど、ファシリティドッグを知ってもらう活動をしている永山さん。「アピールすることの大事さを感じた」
◇そばにいて、ただ寄り添ってくれる
―ファシリティドッグとの関わりで、一番うれしかったこと、助けられたなと思うことはどんなことですか。
宇都宮 骨髄移植が終わって、もうちょっとで退院という時に、白血球などの数値が下がり、発熱してしまいました。心のストレスも大きくて、どん底に突き落とされた感じでした。でも、マサに毎日来てもらって、マサといる時だけは楽しいと思えて。マサは「遊ぼう!」って感じでいるわけではなくて、俺の気持ちに寄り添ってくれていたというか。そんな感じがすごくうれしくて、ずっとそばにいてほしいと思いました。マサがいなかったら、ストレスでどうなっていたか…。
星 お母さんがいなくて一人で麻酔や髄注(脊髄の周りにある空間に細い針を刺して、直接髄液の中に薬剤を注入する治療方法)をしなくちゃいけない時、マサがいたから大丈夫でした。なでながら、権守(ハンドラー・権守礼美)さんがマサの動画を見せてくれて、リラックスできました。ステロイドの薬を使っていた時は、嫌でイライラし過ぎて、「やだ!」と暴れていました。マサがいないと、本当に「フン!!」ってなってしまっていましたが、マサが来るとつい笑っちゃう。イライラしていたのに。落ち着くんだな、と感じました。マサがいるのといないのでは、気持ちが全然違うんです。
永山 抗がん剤の治療中はもちろんつらかったですが、投薬後もつらさが長引いていました。同室の子たちが院内学級でいなくて、一人の時間、アイビーと大橋さん(ハンドラー・大橋真友子)が来てくれ、ただそばにいてくれたんです。私は体調がつらすぎてなでることもできなかったのに。うれしかったです。
(2025/04/04 05:00)