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筋肉が徐々にやせて、全身が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)。近年、国内で患者数が増えている。原因不明の神経難病で、根本的な治療法はない。しかし、進行を遅らせる薬が登場し、生活の質を長く保てるようになってきた。
ALSの症状
▽運動神経系だけに障害
ALSは、脳と脊髄にある筋肉を動かす神経が侵される病気だ。歩こうとするときは、「足を動かせ」と脳が信号を出し、信号が脳から背中の脊髄を通り、足の筋肉へと伝わって歩行が可能になる。ALSでは、この信号の通路になる運動ニューロンが壊れ、信号が筋肉に伝わらなくなる。
運動ニューロンの壊れた場所によって、さまざまな障害が出る。足の筋肉につながる場所なら歩行困難になり、喉や舌につながる場所なら話せなくなる。呼吸するための筋肉につながる場所なら呼吸困難に陥る。
かつては発症から数年で呼吸不全により死亡することが多かった。長期間生存する人もいるが、運動ニューロンはほぼすべて壊れるため、最終的に全身が動かなくなる。しかし、呼吸筋まひでの呼吸器の使用や、嚥下(えんげ)筋麻痺における胃瘻(いろう)造設の普及により、日常生活を送れるようになる例が増えている。
ALSの国内患者数は推定1万人前後。男性にやや多く、60~70歳で好発し、一部で家族歴が認められる。
▽対症療法で進行を抑制
筑波大学(茨城県つくば市)医学医療系神経内科の玉岡晃教授は「運動ニューロンが障害される原因は十分解明されていません。遺伝子異常、酸化ストレス、グルタミン酸が過剰に増えることが原因ではないかと推測されています」と説明する。神経伝達物質であるグルタミン酸が増え過ぎることで、神経が興奮しすぎて壊れてしまうという。
病気の進行を遅らせる薬として、グルタミン酸による神経毒性を抑え、神経細胞を保護するリルゾールという薬が2012年から使えるようになった。15年には、酸化ストレスから神経細胞を保護するエダラボンも承認された。「軽症、中等症の段階で症状を軽くしたり、生存期間を延長することが期待されています」と玉岡教授。
将来的には、臨床試験の結果次第ではあるが、抗てんかん薬のペランパネル、抗パーキンソン病薬のロピニロール、白血病治療薬のボスチニブなどがALSの治療に使えるようになる可能性があるほか、遺伝子治療や運動神経を再生させる治療の研究も進んでおり、治療法が増えることが期待される。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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