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5月30日が「世界・多発性硬化症(MS)の日」と聞いても、ぴんとこない人もいるだろう。かつて欧米での症例が多かったこの難病は、ここ数年日本でも患者数が増加している。20~30歳代の女性に多く発症し、視覚障害や歩行困難を伴うことなどが特徴だが、周囲の理解不足が患者にとって大きな壁となっている。
◇多様な症状、周囲は無理解
新潟大学脳研究所・医歯学総合病院の河内泉講師によると、多発性硬化症(MS)は脳の髄鞘(ずいしょう)が剥がれ落ちて、神経の伝導がうまくいかなくなる病気だ。国内の患者は推定で約1万4000人。再発と寛解(症状が治まる状態)を繰り返すことが多い。
多発性硬化症の患者が増加
症状は多様だ。視力が低下したり、痛み・感覚が鈍くなったりする。疲れやすくなったり、うつ状態になったりすることもある。視力の問題でいうと、ぼやけて見える、視野が欠ける、二重に見える―といった症状が挙げられる。河内講師は「MSの症状は、周囲から病気だとは理解されにくい」と問題視する。目に見えない症状を一般の人に分かってほしい―。そんな患者の思いは切実だ。
「職場の同僚に話すと、差別されるのではないかと感じて怖い」
「夫から『子どもが欲しいから、離婚してくれ』と言われた」
こうした患者のつらい声を聞くことがあると、河内講師は残念そうに言う。
多発性硬化症の多様な症状
◇家族、社会がサポートを
今では治療が進歩し、専門医の指導で疾患をコントロールすれば、通常の勤務に支障はないし、妊娠や出産にも悪影響はない。日本では2000年から薬による治療が始まった。現在、使われている治療薬は6剤。自分で注射するものが三つ、経口が二つ、点滴が一つだ。それぞれ、働く仕組みや効き目などが異なる。
(2019/05/23 07:00)
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