Dr.純子のメディカルサロン

アンドロイド患者で医療教育
~ここまできた技術革新の波~ 藤倉輝道・日本医科大学医学教育センター教授

 医療分野で技術革新が目覚ましい時代です。人工知能(AI)が診断に活用されたり、医療ロボットが臨床で使われたり。

医療面接用シミュレーター「SAYA」。目にはセンサーが内蔵され、医師役の学生のアイコンタクトの良しあしや、声のトーンの良しあしなどを評価するという

 最近では、医療の教育の場面で、AIを組み込んだアンドロイド型のロボットが開発されつつあり、「模擬患者」として登場する日も近いということです。

 そこで今回、このアンドロイド開発に携わり、9月21日に行われる第7回日本シミュレーション医療教育学会学術大会で会長を務める日本医科大学医学教育センターの藤倉輝道教授にお話を伺いました。


 ◇教育に欠かせない「模擬患者」

 海原 「模擬患者」さんの存在は、医学教育で重要な役割を果たしていますが、こうしたアンドロイドは、どのように活用されるのですか。

 藤倉 本学でも多くの市民ボランティアの方に「模擬患者」として、医学生との医療コミュニケーションのトレーニング役になっていただいています。ただ、マンパワーには限りがあります。

 そこで、トレーニングの基本的なスキルの部分はアンドロイドに任せ、より深い部分、エモーショナルな部分を、市民ボランティアの方々による「模擬患者」さんが受け持つような形になってくると思います。


 海原 医学教育ではこれまで、いわゆる人型のシミュレーターが使われていますね。シミュレーターは、どのように使われますか。


 ◇人型シミュレーター「シナリオ」

 藤倉 学習目標というものは「知識」「技能」「態度・習慣」の三つの要素に分類されます。シミュレーターを用いた学習は、主として技能の習得に用いられることが多いです。

 これまで医学部では、臨床実習が近づいてきた4年生頃から使用し、臨床実習中、そして研修医が使用することが多かったです。

 そこで、われわれは、主として座学で臨床を学んでいる3、4年生を対象に、医学の知識をより能動的に学ぶプログラムとして、シミュレーター学習を考案しました。

人型シミュレーター「シナリオ」を使った授業

 この学習は、学生が「課題シナリオ」と呼ばれるものを読み、学習項目はグループの仲間と決め、学びたいことを学ぶという方法です。しかし、この「課題シナリオ」では、多くの課題が紙媒体で与えられるため、どうしても一方向になります。

 今回は、課題に相当するものを、その名も「シナリオ」という人型のシミュレーターに仕込みました。心臓の拍動や呼吸の数などは、病状に従って、変化しながら提示されます。

 学生はあたかも、患者さんを診察するような形で医学情報をシミュレーターから収集し、考察するというものです。


 海原 通常、座学で学ぶことが多い3、4年生の時期に、シミュレーターを使って、より臨床現場に近い学習ができるわけですね。学生にとっては、よりリアルで、緊張感が持てる学習になることが分かります。授業風景をビデオで拝見しました。皮膚の色や傷などが非常にリアルですね。



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