医学部トップインタビュー

一流の技量で地域に貢献
東西医学の統合をめざす―富山大学医学部

 富山大学医学部は、「薬の富山」としての300年の歴史を背景に、1975年、富山医科薬科大学として創設された。2005年に富山大学と再編統合され、来年には開学45周年を迎える。医師不足(後半で説明を)の改善に向け、地域医療を担う医師の輩出を一番の目標としてきた。足立雄一医学部長は「地域に埋もれて頑張るだけでは地域に役立つ医師にはなれない。大学で最先端の医療を学んだり、研究をしたり、留学して世界を見るなど、幅広い経験を通して一流の技量を身に付けてほしい」と話す。

薬用植物園(富山大学医学部提供)

 ◇和漢薬の伝統

 北アルプスを一望する丘に立つ杉谷キャンパスには、医学部、薬学部、和漢医薬学総合研究所、付属病院があり、研究、教育、臨床の各分野で密接な連携を取っている。

 「付属病院には和漢診療科があって、エキス製剤だけでなく独自処方の生薬エキスも処方していました。最近は空調が良くなったので、あまり匂わないのですが、昔は薬剤部や和漢診療科の病棟に行くと、何ともいえない和漢薬の匂いがしていました」と足立医学部長は振り返る。

 和漢薬は古来、医師の見立て、経験をもとに処方され、使われ続けてきた。しかし、どんな症例にどんな処方が良いのか、科学的に解明して、エビデンスのある和漢診療につなげる取り組みが進められている。

 カリキュラムにも「和漢診療学」があり、特有の診察方法を習得できる。「脈の取り方、触診の仕方がぜんぜん違うんですよ。西洋医学とは違った漢方の知識や考え方を学びます」

 キャンパス内にある薬用植物園や民族薬物資料館での体験実習では、富山大学ならではの体験ができると学生にも好評だ。

 ◇AI時代の脳科学研究

 研究面では、脳科学分野で世界をリードする研究成果をあげている。マウスを用いて記憶の成り立ちを分子生物学的に解明する研究が盛んに行われ、記憶障害を伴う認知症の予防や治療法にもつながるのではないかと期待されている。

杉谷キャンパス(富山大学医学部提供)

 このほか、人間が寝ているときや、ぼんやりしているときの脳の状態(アイドリング脳)のときに、記憶を再構築する仕組みなど、さまざまな角度からの研究が進められている。

 「今後、AIがさらに発展していく。人間の脳を解析することで、AIとの違いが明らかになり、有効な活用方法が見えてくるかもしれません」

 学生のリサーチマインドを育成するため、短期間の基礎配属を発展させた「研究医養成プログラム」を設けている。在学中に研究した内容を論文にまとめ、学会発表をする学生もおり、修了すれば、通常は4年かかる大学院を3年で卒業できる。

 「医師免許を取得したあとは、できるだけ早く実技を磨きたいと思う人が多いので、まる4年間大学院に行くのは大変。1年短縮されるだけでもかなり大きなメリットになる」と足立医学部長。

 今年はこのプログラムに参加した学生が皆さん、一旦初期研修を初めて、その後大学院に入る。

 ◇学生の意見も採用

 国際認証評価を得るにあたって、大学の教育や研修内容に学生や研修医の意見を取り入れることが求められ、話し合いの機会を設けている大学が多い。

 「最近では初期研修医からガイドラインの本が欲しいという要望が出ました。予算の関係で買ってあげることはできませんが、各医局で余っているものを集めて提供できるようにしています」

 どんな小さな話でも、学生の希望に対して「そんなこと」と突き返すのではなく、できる範囲で対応していく姿勢が重要なのだという。

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