大腸がん、進歩する薬物療法
~切除不能ながんでも予後改善~
日本人のがんの中で罹患率の第1位は大腸がん、死亡数は肺がんに次ぎ第2位を占める。愛知県がんセンターの室圭(むろ・けい)副院長(薬物療法部長)は「手術で切除できない大腸がんでも、薬物療法の発展で予後は改善している」とし、早期発見のカギとなる検診について便潜血検査を勧める。

大腸がん治療の3本柱と緩和ケア
大腸がんの患者は増加傾向にある。その背景について室副院長は「以前より食事が洋風化するなど生活環境の変化が確実に影響しているだろう」と指摘する。
大腸がんの病期は0から4まで。ステージ0(がんが粘膜の中にとどまっている)、ステージ1(がんが大腸の壁にとどまっている)、ステージ2(がんが大腸の壁の外まで浸潤している)、ステージ3(リンパ節転移がある)、ステージ4(肝転移・肺転移または腹膜幡腫がある)―となっている。
室副院長によれば、大腸がんの治療は内視鏡治療・手術療法、放射線治療、薬物療法の3本柱となる。これに、つらさや症状の緩和のケアが加わる。治療方針はステージによって変わる。がんの発見が早ければ、予後の生存率は向上する。室副院長は「ステージによってベストの治療法がある」と強調する。

愛知県がんセンターの室圭・副院長
大腸がんにおける薬物療法の目的は大きく二つに分かれる。がんの根治を目指すものと、治すことは無理なのでうまく付き合っていくことを目指すものだ。前者は大腸がん手術の後の補助化学療法、術前の化学放射線療法だ。さらにコンバージョン治療がある。根治不能な大腸がんに対し全身薬物療法を施した後、手術で切除できるようにするもので、S字結腸がんの手術後に肝臓に転移、再発した患者に実施したケースがある。
後者は切除できない大腸がんに対する全身薬物療法で、がんの進行を遅らせることにより生存期間の延長を目的とする。室副院長は「分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬によって予後は改善している」と言う。
◇コスパが良い便潜血検査
大腸がんの検査では内視鏡検査が欠かせない。しかし、1次検診において「日本対がん協会」(公益社団法人)が最も推奨しているのが便潜血検査だ。室副院長は「最も費用対効果が良いからだ。検診という観点からは内視鏡検査よりメリットがある」と説明する。
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(2025/04/08 05:00)